◆◇◆◇◆◇
紫織が寝ている横で、宏樹は車を目的地に向けてひたすら走らせる。
千夜子に電話越しで別れを告げられてから、十日が経っていた。
突然ではあったが、それまでの経緯を考えればあり得ないことでもなかった。
逢うこともままならなくなった宏樹より、近しい存在に心変わりしてしまうほど、千夜子は不安に陥っていたのだ。
これは、自分に非があった、と宏樹は思っている。
ほんの少しだけでも、自分を切り捨てた千夜子を恨みかけたが、それは違う。
(俺は、何を考えているのか分からないとよく言われていたしな)
目の前に広がる灰色のアスファルトと白いセンターラインを見ながら、宏樹は自嘲するように口の端を上げる。
宏樹は自分の感情を抑える癖がある。
子供の頃はもう少し素直だったと思うが、年の離れた弟――朋也が生まれてから、無意識のうちに、変わらなければ、と思うようになっていたのかもしれない。
(からかうのは、面白いんだけどな)
朋也が真っ赤になってムキになる姿を想像して、宏樹は思わず笑いが込み上げた。
朋也も最近は大人ぶっていても、紫織が絡むと滑稽なほど豹変する。
紫織に冷たくあしらわれると、情けないほど萎縮し、かと思えば、少しでも微笑まれると、釣られたようにニンマリと笑う。
(俺が今、紫織とこうして一緒にいるなんて知ったら、あいつはどうなることやら……。いや、それはそれで面白いかもな)
宏樹は悪戯を思い付いたあとの子供のような心境で、強くアクセルを踏み込んだ。
紫織が寝ている横で、宏樹は車を目的地に向けてひたすら走らせる。
千夜子に電話越しで別れを告げられてから、十日が経っていた。
突然ではあったが、それまでの経緯を考えればあり得ないことでもなかった。
逢うこともままならなくなった宏樹より、近しい存在に心変わりしてしまうほど、千夜子は不安に陥っていたのだ。
これは、自分に非があった、と宏樹は思っている。
ほんの少しだけでも、自分を切り捨てた千夜子を恨みかけたが、それは違う。
(俺は、何を考えているのか分からないとよく言われていたしな)
目の前に広がる灰色のアスファルトと白いセンターラインを見ながら、宏樹は自嘲するように口の端を上げる。
宏樹は自分の感情を抑える癖がある。
子供の頃はもう少し素直だったと思うが、年の離れた弟――朋也が生まれてから、無意識のうちに、変わらなければ、と思うようになっていたのかもしれない。
(からかうのは、面白いんだけどな)
朋也が真っ赤になってムキになる姿を想像して、宏樹は思わず笑いが込み上げた。
朋也も最近は大人ぶっていても、紫織が絡むと滑稽なほど豹変する。
紫織に冷たくあしらわれると、情けないほど萎縮し、かと思えば、少しでも微笑まれると、釣られたようにニンマリと笑う。
(俺が今、紫織とこうして一緒にいるなんて知ったら、あいつはどうなることやら……。いや、それはそれで面白いかもな)
宏樹は悪戯を思い付いたあとの子供のような心境で、強くアクセルを踏み込んだ。