刻々と時は過ぎ、気が付くと日曜日となっていた。

 学校はもちろん、大抵の会社も休みであるが、紫織の父親は周囲が休日を満喫している時にこそ働きに出ている。
 今日も朝早くから出勤したようで、紫織が起きた頃にはすでに父親の姿はなかった。

 幼い頃には、どうして自分のお父さんはよそのお父さんと違うんだろう、という疑問を抱いたこともあったが、今となっては、父親のいない休日は当たり前のようになってしまい、特に気にならなくなっていた。

 父親が不在の中で、紫織と母親はふたりで朝食を食べ、食事を済ませたあとは、母親は後片付けをし、紫織はコタツに寝転んでテレビを観ている。

 何もせずに、ただのんびりと過ごす。
 それが紫織にとって、何より幸せな休日である。

「ちょっとあんた……」

 後片付けを終えた母親はリビングへと戻って来るなり、紫織を呆れたように見下ろしていた。

「いくら休みだからって何ぐうたらしてんの? ちょっとは手伝いのひとつもしようって気持ちにならないの?」

「うーん……、めんどくさい……」

 紫織はだるそうに答えると、首だけを出す格好でコタツに潜り込んだ。

 その行動は母親の癇に障ってしまったらしい。
 突然、何の前触れもなしに頭に平手が飛んできた。

「……ったあ……」

 紫織は首をわずかにもたげると、コタツから手を出して自らの頭を何度もさすり、母親を恨めしげに見上げた。