そんな紫織に、涼香は「あったりまえじゃん!」と答える。

「いっつも一緒にいる高沢を差し置いてでも紫織が惚れてしまうような相手。どんだけいい男なのか、すっごく興味あるもんねえ」

「きょ、興味って……」

 涼香の失礼極まりない発言に、さすがの紫織も頬と口角を痙攣させた。

 興味があるというのは分からないでもないが、自分の中の大切な想いをそんな軽々しい言葉で片付けてほしくない。
 そう思っていると、涼香にも紫織の気持ちが伝わったのか、不真面目な笑いを引っ込めて真顔になった。

「まあ、興味ってのは言葉が悪かったけどさ。でも、紫織のことは何でも知りたいから。あ、でも、変な意味じゃないからその辺は誤解しないで。要は、あんたは高校に入ってからの一番の友人だと私は思っているから興味が……、っと! ああもう! 何て言ったらいいんだ!」

 無遠慮な涼香にしては珍しく、必死で言葉を選ぼうとしているらしいが、普段が普段だけに軽率な台詞しか浮かばないようだ。

 考えを巡らせている涼香を見つめながら、紫織もつまらないことで腹を立てたことが馬鹿馬鹿しくなってきた。

「――もういいよ」

 紫織は口元を綻ばせた。

「私も涼香は一番の友達だと思ってるからね。――でも、もしかしたら、聴いてもつまんないかもしれないよ?」

 紫織が念を押すように訊ねると、涼香は横に首を振った。