◆◇◆◇

 ちょっとしたドライブは、暇潰しにちょうど良いと思う。
 目的を決めず、ただ走らせているだけで憂鬱な気持ちも少しずつ和らいでゆく。

 国道は業者のトラックや営業車が行き来しているため、平日であってもそれなりの台数が走っている。
 だが、国道を逸れた裏道に入ると、さすがにそこはガラガラだった。

(やっぱり、こういう所を走らせるのが楽しいんだよな)

 宏樹は口の端を上げ、標識がないのをいいことににアクセルを踏み込む。

 メーターはじわじわと、だが確実に上がっている。
 一瞬、メーターの存在を忘れて走っていたが、ふと気が付いてチラリと確認した。すると、100kmに到達しそうになっていたので、クラッチを踏み、ギアをシフトダウンして調節する。

 まさかとは思いつつ、目だけを動かしてどこかにパトカーが潜んでいないかと確認してみるが、この辺はパトカーどころか、人が歩いている姿さえ見受けられなかった。

 宏樹はホッと胸を撫で下ろすと、今度は辺りに広がる田園風景を流し見ながら車を走らせる。

(俺がガキの頃は、こういった光景は当たり前のように見ていたよな)

 そんなことを考えながら、宏樹は改めて自分の幼い頃を懐かしく想い出していた。

 宏樹達の住む辺りも、少し前まではのどかな田園地帯であったが、近頃では開発が進み、大型のショッピングセンターや、それに便乗して新たな住宅地が次々と誕生している。
 その影響で、子供達の遊び場もどんどんと縮小されてしまっている。
 だが、今時の子供は外で遊ぶことよりも、家の中でゲームをしている率の方が高いようだ。
 考えてみると、朋也や紫織が幼い時にはすでにその傾向が表れていたような気がする。

(まあ、朋也は違ったけどな)

 不意にその頃の朋也を想い浮かべ、宏樹は苦笑する。

 年中、元気がありあまっていたが、その中でも冬――特に雪が降ると、周りが呆れてしまうほどテンションを上げていた。
 その巻き添えを食らっていたのは、宏樹と紫織。
 特に宏樹は朋也と十歳も離れていることもあって、駄々をこねられてしまうと否とは言えず、黙って付き合っていた。