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 朋也が学校へ行ってから、宏樹はしばらくリビングでコーヒーを飲みながらテレビを観ていた。

 時間帯的に、どこの局も競うように情報番組ばかり。
 しかも、毎日同じことを繰り返し報道しているので、観ている側としてはさすがに飽き飽きしてしまう。

「宏樹」

 台所仕事を終えた母親はリビングへ来るなり、腰に両手を当てながら仁王立ちした。

「あんたねえ、休みのたびに家でグダグダ過ごすのはやめたら? それに、二十六にもなって結婚もしないで家に居座っちゃって……。全く! 我が息子ながら情けないわねえ」

 そう言うと、母親は大袈裟に深い溜め息を漏らす。

 母親の気持ちはよく分かる。
 確かに、真っ当に働きに出て家にも収入の一部を入れているとはいえ、世間的には宏樹のようなタイプは引き籠りにしか映らないであろう。

 両親の気苦労を考えると、自立して身を固めるべきかとも思うが、家にいる方が何かと楽だし、それ以前に、結婚というものが未だに実感が湧かない。
 もちろん、考えている相手がいないわけではないが、最近は互いに忙しく、すれ違いばかりが続いている。
 彼女と別れることは本意ではないが、そのうち、関係が自然消滅してしまうのではと、不意に考えてしまうこともある。

「ちょっと! 聴いてるのっ?」

 母親のヒステリックな声に、宏樹はハッと我に返った。

「とにかく、大の男にずっと家にいられるのは迷惑なの! だからどっか行ってちょうだい!」

 ここまで言われてしまったら、この場に居座り続けるわけにはいかない。

 宏樹は重い腰を上げ、一旦自室へ引っ込むと、ハーフコートを羽織ってから車のキーに手を伸ばした。