◆◇◆◇
「……や。……もや……」
夢と現実の境目で、誰かが呼んでいるような気がした。
「……ん……」
朋也は小さく呻くと、重くなっている瞼をこじ開けた。
いつの間にか眠っていたらしい。
陽はすっかり暮れ、点けっ放しにしていた電気ストーブの明かりが暗闇の中にぼんやりと浮かび上がっている。
朋也はゆっくりと身を起こして、ベッドの上で胡座を掻いた。
すると、今度ははっきりと、「朋也!」と苛立ちの籠った声が耳に飛び込んできた。
「んだよー!」
その場から一歩も動かず、朋也は面倒臭そうに怒鳴り返した。
ドアの向こう側からは、階段を昇ってくる荒々しい足音が聴こえてくる。
「『んだよ』じゃないの! こっちは何度もあんたを呼んでたのに!」
部屋のドアを開けたのと同時に、母親が朋也を嗜めると、辺りをグルリと見回して大きな溜め息を吐いた。
「あんた、真っ暗にして何ぼんやりしてんの……?」
「別に好きで暗くしてたんじゃねえよ。寝てたら暗くなってただけで」
「呆れた! ほんとにあんたは暇さえあればよく寝るわねえ……。だから図体だけがやたらとデカくなったのかしら?」
「うるせえ! それより何なんだよ? 用がないならとっとと出てけ!」
「何なのその言い方は……!」
母親は朋也を一瞥すると、再び溜め息を漏らした。
「ご飯が出来たから呼びに来たのよ。――食べたければ降りてらっしゃい」
これ以上は相手しきれない、とでも言いたげに母親は黙って部屋を出て行った。
残された朋也は、ストーブの明かりをしばらく見つめていた。
とりあえず、母親のお陰で頭も完全に覚めた。
同時に、〈ご飯〉という台詞を耳にしたとたん、急に空腹を感じ始めた。
「飯、食うか……」
朋也はひとりごちると、ベッドから降りてストーブのスイッチを切り、静かに部屋を出た。
「……や。……もや……」
夢と現実の境目で、誰かが呼んでいるような気がした。
「……ん……」
朋也は小さく呻くと、重くなっている瞼をこじ開けた。
いつの間にか眠っていたらしい。
陽はすっかり暮れ、点けっ放しにしていた電気ストーブの明かりが暗闇の中にぼんやりと浮かび上がっている。
朋也はゆっくりと身を起こして、ベッドの上で胡座を掻いた。
すると、今度ははっきりと、「朋也!」と苛立ちの籠った声が耳に飛び込んできた。
「んだよー!」
その場から一歩も動かず、朋也は面倒臭そうに怒鳴り返した。
ドアの向こう側からは、階段を昇ってくる荒々しい足音が聴こえてくる。
「『んだよ』じゃないの! こっちは何度もあんたを呼んでたのに!」
部屋のドアを開けたのと同時に、母親が朋也を嗜めると、辺りをグルリと見回して大きな溜め息を吐いた。
「あんた、真っ暗にして何ぼんやりしてんの……?」
「別に好きで暗くしてたんじゃねえよ。寝てたら暗くなってただけで」
「呆れた! ほんとにあんたは暇さえあればよく寝るわねえ……。だから図体だけがやたらとデカくなったのかしら?」
「うるせえ! それより何なんだよ? 用がないならとっとと出てけ!」
「何なのその言い方は……!」
母親は朋也を一瞥すると、再び溜め息を漏らした。
「ご飯が出来たから呼びに来たのよ。――食べたければ降りてらっしゃい」
これ以上は相手しきれない、とでも言いたげに母親は黙って部屋を出て行った。
残された朋也は、ストーブの明かりをしばらく見つめていた。
とりあえず、母親のお陰で頭も完全に覚めた。
同時に、〈ご飯〉という台詞を耳にしたとたん、急に空腹を感じ始めた。
「飯、食うか……」
朋也はひとりごちると、ベッドから降りてストーブのスイッチを切り、静かに部屋を出た。