「私、ちゃんと無事に高校卒業したよ。それに、あの時と気持ちも変わってない。――ずっと、宏樹君だけが好きでした」

 簡単に言いきってしまったようにも思えたが、これが紫織の精いっぱいの告白だった。

 紫織からの告白を受けた宏樹は、しばらく考え込んでいた。
 自らの顎に手を添え、あらぬ方向に視線を向けている。

(やっぱり、ダメなのかな……?)

 絶望しかけたまさにその時だった。

「……ぷっ……!」

 突然、宏樹が吹き出した。

 紫織は何が起こったのか分からず、ただ、宏樹を傍観する。

「――参った」

 宏樹は笑いを噛み殺しながら言うと、紫織の頭を乱暴に掻き撫でた。

「俺は絶対飽きられると思ってたんだけどな。――前のもそうだったから。

 でも、紫織は根性があるというか、頑固というか……」

「どうせ私はしつこいですから」

 紫織は、プウと口を尖らせる。
 それがさらに宏樹のツボを刺激したようで、今度は声を上げて笑い出した。

「あっははは……! けど、そこが紫織のいいトコだよ。〈しつこい〉はさすがに言葉が悪いから……。そうだな、紫織は〈一途〉ってことか」

 宏樹はひとりで言いながらひとりで納得している。

「――それで、宏樹君はどうなの?」

 紫織は痺れを切らし、返事を催促した。

 宏樹は「そうだなあ」とわざとらしく焦らしたあと、ニヤリと口の端を上げた。