◆◇◆◇
卒業式はつつがなく進んだ。
そのあとは教室でひとりひとりに卒業証書が手渡され、担任と副担任からの挨拶を聴き、それで全て終了した。
解放されてからは、それぞれが仲の良い同士で固まり、写真を撮り合ったり、サイン帳にメッセージを書き合ったりしている。
紫織と涼香もまた、他のクラスメイトに交ざって写真を撮った。
長いようであっという間だった三年間。
こうして笑って過ごせる時間もないのだと思うと、やはり淋しいような気持ちになる。
「紫織!」
クラスメイト達と別れの挨拶を終えたあと、朋也に呼ばれた。
「なに?」
「あのさ、よけいなお節介かもしれないけど……。兄貴、今日は休みで家にいるから」
それだけ告げると、朋也は踵を返して紫織の前から去って行った。
(宏樹君が……)
紫織はその時、宏樹の言葉を想い出した。
『とりあえず、紫織が高校卒業するまで待とう』
あの日の台詞を、宏樹が憶えているかどうかは分からない。
しかしそれよりも、紫織自身が改めて宏樹に気持ちを伝えたいと思った。
(言わなきゃ……!)
紫織はその場から駆け出した。
「紫織、どうしたの?」
途中で涼香に呼び止められた。
「ちょっと急いでるから! またね!」
最後の挨拶にしてはずいぶんとおざなりなものになったが、今の紫織はそんなことにも気付いていない。
それだけ、紫織の頭の中は宏樹でいっぱいだった。
卒業式はつつがなく進んだ。
そのあとは教室でひとりひとりに卒業証書が手渡され、担任と副担任からの挨拶を聴き、それで全て終了した。
解放されてからは、それぞれが仲の良い同士で固まり、写真を撮り合ったり、サイン帳にメッセージを書き合ったりしている。
紫織と涼香もまた、他のクラスメイトに交ざって写真を撮った。
長いようであっという間だった三年間。
こうして笑って過ごせる時間もないのだと思うと、やはり淋しいような気持ちになる。
「紫織!」
クラスメイト達と別れの挨拶を終えたあと、朋也に呼ばれた。
「なに?」
「あのさ、よけいなお節介かもしれないけど……。兄貴、今日は休みで家にいるから」
それだけ告げると、朋也は踵を返して紫織の前から去って行った。
(宏樹君が……)
紫織はその時、宏樹の言葉を想い出した。
『とりあえず、紫織が高校卒業するまで待とう』
あの日の台詞を、宏樹が憶えているかどうかは分からない。
しかしそれよりも、紫織自身が改めて宏樹に気持ちを伝えたいと思った。
(言わなきゃ……!)
紫織はその場から駆け出した。
「紫織、どうしたの?」
途中で涼香に呼び止められた。
「ちょっと急いでるから! またね!」
最後の挨拶にしてはずいぶんとおざなりなものになったが、今の紫織はそんなことにも気付いていない。
それだけ、紫織の頭の中は宏樹でいっぱいだった。