◆◇◆◇

 家の前まで来ると、先ほどよりも雪がさらに積もっていた。

「それじゃあ」

 朋也が背を向けた瞬間、紫織は「待って!」と引き止めた。

 朋也はその声に反応して振り返った。

「これからもずっと、朋也は私の大切な〈家族〉だよ」

 気休めにもならないだろう、と紫織は思いつつ、言わずにはいられなかった。

 朋也は驚いたように目を見開いている。

「――〈友達〉よりはレベルが上だな」

 皮肉とも捉えられる言葉だったが、紫織は嫌な気持ちには全くならなかった。

 朋也もきっと、紫織の台詞を喜んでいる。
 そう信じているから。

「また明日ね」

「ああ、また」

 それを潮に、朋也は今度こそ自分の家へ入って行った。

 紫織はそれを見届けてから、未だに降り続く雪を眺めていた。

 一粒だけを見れば小さな結晶。
 しかし、宏樹が言っていた通り、時間をかけて降り積もれば、全てを銀世界へと変えてゆく。

(宏樹君への想いも、また少しずつ育んでいけばいいよね)

 紫織は自分に言い聞かせると、手を翳しながら雪の花を一身に浴び続けた。

[第十話-End]