「――それにしたってお前、センスがあるのかないのかよく分かんねえよなあ」

 紫織にプレゼントを渡してから、朋也は笑いを噛み殺しながら続けた。

「まさか、紫織からのプレゼントが、シャーペンとボールペンのセットだとは思いもしなかったよ。まあ、実用性があるから別に構わねえけどさ」

「――別にいいじゃん」

「いや、悪いなんて言ってないし」

 朋也と会話を交わしながら、紫織はふと、こうして軽口を叩き合うのはずいぶんと久しぶりだな、と思っていた。

 高校生になって初めての冬は、本当に色々なことがあった。

 宏樹のために泣き、朋也の想いに苦しみ、涼香の気持ちを知ってからは、さらに胸を痛めた。

(でもまだ、宏樹君には応えてもらえないんだよね……)

 帰りの車の中で告げられた、『高校卒業するまで』という一言。
 紫織は宏樹にずっと片想いを続けていたから、これからもずっと想い続ける自信はあるが、果たして宏樹はどうだろう。

「――朋也」

 紫織に呼ばれた朋也は、「なに?」と顔を向けてきた。

 紫織は少し間を置いてから口を開いた。

「朋也は、好きな人が出来たら、ずっと心変わりしないって自信、ある?」

 紫織の質問に、朋也はあからさまに表情を曇らせた。
 目を忙しなく泳がせ、思考を巡らせている。
 だが、やがて、思いきったように口にしてきた。

「――兄貴になんか言われた?」

 紫織はビクリとした。
 瞠目したまま朋也を見つめていると、朋也は呆れたように溜め息をひとつ吐いた。