紫織が言い終えるのと同時に、車は止まった。
 目の前の信号が、ちょうど黄色から赤に変わったところだった。

 宏樹は紫織に視線を向ける。

「――ほんとに頑固だな」

 溜め息と同時に吐き出した。

「まあ、そこが紫織のいいトコかもしれないけど……」

 宏樹は困ったように口の端を上げると、紫織に告げた。

「でも、今すぐってわけにはいかないからな。朋也のことももちろんあるけど、何より、紫織はまだ高校生だし。
 とりあえず、紫織が高校卒業するまで待とう。もし、それまでに紫織が心変わりしていなければ、俺も考えてやるよ」

「――それ、ずいぶんと長過ぎるよ……」

 紫織は口を尖らせて不満を露わにした。

 しかし、宏樹はそんなものは全く意に介した様子もなく、ただ、「我慢しなさい」とだけ言った。

「それに、ハタチ過ぎの男が女子高生に手を出すなんて、さすがに拙いだろうが……」