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 約束の時間までは三十分ほどあったが、紫織はいそいそと家を出た。
 ちなみに待ち合わせ場所はそれぞれの家の近くではなく、あえて最寄りの駅前にした。
 家の前だと、どうしても朋也と鉢合わせしてしまう可能性がある。
 もちろん、駅も安全とは言いきれないのだが。

(宏樹君、なんて言って出て来るんだろ?)

 駅まで続く道を足早に歩きながら、紫織は思った。

 宏樹のことだから、飄々として、もっともらしい嘘を吐くだろう。
 しかし、同時に後ろめたさも感じているに違いない。

 宏樹は紫織を可愛がってくれているが、実の弟である朋也もまた、うんと大切に想っている。
 それは紫織もよく分かっていた。