「――良かったら、これも受け取って……」

 躊躇いがちに、しかし、押し付けるようにそれを宏樹に渡してきた。

「これは……?」

「――今日は、クリスマスイヴでしょ?」

「そうだっけ?」

 もちろん、今日がクリスマスイヴなのは今朝になって気付いていたが、紫織からの予想もしなかったプレゼントに戸惑い、つい、惚けた返答をしてしまった。

「けど、俺は何にも用意してないよ?」

 紙袋の袋の部分を握った状態で宏樹が言うと、紫織は、「別にいよ」とゆっくりと首を横に振った。

「ただ、私が渡したいと思っただけだもん。――コートのお礼とか、色々あるし……」

「そっか」

 宏樹は紙袋を一瞥してから「ありがとう」と礼を口にした。

「せっかくだから貰っておくよ。でも、やっぱり貰いっ放しじゃ悪いな。

 紫織、なんか欲しいモンとかあるか?」

「え? 急に言われても……」

 紫織は本気で困惑したらしく、空に視線をさ迷わせていた。

「――何でも、いい……?」

 しばらくして、紫織が口を開いた。

「ああ、そんなに高くなければな」

「――ほんとに?」

「ほんとに」

 宏樹が大きく頷くと、紫織は真っ直ぐに宏樹を見つめてきた。

 紫織の真剣な眼差しをまともに受けた宏樹は、まさか、無理難題を言われはしないか、と少々不安になった。
 だが、紫織に限って、高額なものをねだってくるとも思えない。