「あの、実は、プレゼントを探しているんですけど……」

「クリスマスプレゼントですか?」

「はい。――でも、どうゆうのがいいのか分かんなくて……」

 店員は紫織のたどたどしい言葉を、笑顔はそのままで頷きながら聴いていた。

「差し支えなければ、お相手の方のご年齢をお訊ねてしてもよろしいですか?」

 店員に訊かれ、紫織は「二十六歳と十六歳のふたりです」と答えた。

「なるほど。かしこまりました」

 店員は大きく頷き、「では、こちらにどうぞ」と紫織を促してきた。

 紫織は言われるがまま、店員の後ろを着いて行く。

(まさか、わざと高い物を押し付けてきたりしないよね……?)

 そんな不安を抱きながら、前を歩く店員の背中を睨んだ。

 と、店員が急に立ち止まって振り返ってきた。

 紫織は慌てて笑顔を取り繕おうとするも、自分でも分かるほど不自然に顔を歪めてしまった。

 だが、店員はそういった客の対応にも慣れているのか、全く意に介した様子を見せない。
 それどころか、先ほどよりもさらにニッコリと笑いかけてきたほどだった。

「お客様は、まだ学生さんでいらっしゃいますよね?」

「え? あ、はい」

 動揺を隠せずに頷く紫織を、店員は微笑ましそうに見つめた。

「それでしたら、この辺りのマフラーが無難ですね」

 そう言いながら、数あるマフラーの中から焦げ茶色の物を取り上げ、それを紫織に預けてきた。

 紫織はマフラーを手にすると、さり気なく値札を確認した。
 表示は〈¥2,000〉。
 予算としてはギリギリのラインだ。