「男の人って、何を貰ったら嬉しいって思う?」

 涼香に訊ねると、涼香は「うーん」と眉根を寄せて唸った。

「私はこれでも女だから、男の気持ちなんて分かんないしなあ。男の兄弟も知り合いもいないし……」

「そっか……、そうだよね……」

 紫織は膝に顎を載せて、うずくまるように俯いた。
 涼香に失礼なことを訊いてしまったことへ対する反省をしつつ、プレゼントについて考え込んだ。

「そんなに悩む必要もないんじゃない?」

 思案に暮れていた紫織に、涼香はあっけらかんとした調子で言った。

「確かに、本人が喜ぶものをあげるのが一番かもしれないけど、一生懸命選んでくれた気持ちってのが何より嬉しいと思うけど?」

 そう言いながら、涼香自身の胸の辺りを親指で差す。
 今の台詞の中にあった、〈気持ち〉を強調しているつもりなのであろう。

「――気持ち、かあ……」

 紫織が反芻すると、涼香は「そ」と強く頷いた。

「ちっちゃい頃から紫織を可愛がってくれてるような人だったらなおのこと、その辺に落ちてる石ころでも喜んで受け取ってくれるよ」

「――いくら何でも、石ころは極端じゃない?」

「だから例えだよ。た、と、え。――まさか、私が『石ころをあげたら?』って言ったら、実行する気だった?」

「――するわけないじゃん……」

 憮然として紫織は答えた。

 それに対して、涼香は「そりゃそうだ!」と、声を上げて笑った。

 今、図書室にはふたり以外には誰もいないから良いものの、人がいたとしたら、確実に冷ややかな視線で睨まれている。
 それぐらい、涼香の笑い声は室内に豪快に響き渡っていた。