◆◇◆◇◆◇
朋也には、決して本当の自分を見せるつもりはなかった。
しかし、気持ちとは裏腹に口が勝手に動いていた。
もしかしたら、自分でも気付かないうちに、本心を全て曝け出してしまいたいと思っていたのだろうか。
(情けない)
自分の前にぼんやりとして立っている朋也を傍観しながら、宏樹は複雑な心境だった。
感情的になってしまった自分に心底呆れる。
「何があったか知らないけど」
躊躇いがちに朋也が口を開いた。
「あんまりひとりで思い詰めるのも良くねえんじゃねえの? 確かに兄貴は〈兄〉って肩書きがある以上、簡単に弱音を吐けないかもしれねえけど。
でも、俺だってもう高校生だし、兄貴の話を聴いてやるだけのことは出来ると思うぜ? ――まあ、アドバイス、ってなるとさすがに厳しいけど」
朋也は真剣そのものの眼差しで宏樹を見つめている。
本心から今の言葉を言ったのは、朋也の表情からもしっかりと覗えた。
「生意気言ってんじゃねえよ」
本当は嬉しかったのに、いつもの癖で、宏樹はついつい、心にもないことを口走ってしまう。
「何とでも言えよ」
朋也もまた、いつもの調子で口を尖らせながら返してきた。
朋也には、決して本当の自分を見せるつもりはなかった。
しかし、気持ちとは裏腹に口が勝手に動いていた。
もしかしたら、自分でも気付かないうちに、本心を全て曝け出してしまいたいと思っていたのだろうか。
(情けない)
自分の前にぼんやりとして立っている朋也を傍観しながら、宏樹は複雑な心境だった。
感情的になってしまった自分に心底呆れる。
「何があったか知らないけど」
躊躇いがちに朋也が口を開いた。
「あんまりひとりで思い詰めるのも良くねえんじゃねえの? 確かに兄貴は〈兄〉って肩書きがある以上、簡単に弱音を吐けないかもしれねえけど。
でも、俺だってもう高校生だし、兄貴の話を聴いてやるだけのことは出来ると思うぜ? ――まあ、アドバイス、ってなるとさすがに厳しいけど」
朋也は真剣そのものの眼差しで宏樹を見つめている。
本心から今の言葉を言ったのは、朋也の表情からもしっかりと覗えた。
「生意気言ってんじゃねえよ」
本当は嬉しかったのに、いつもの癖で、宏樹はついつい、心にもないことを口走ってしまう。
「何とでも言えよ」
朋也もまた、いつもの調子で口を尖らせながら返してきた。