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 どこからともなく聴こえてきた物音で、朋也は目を覚ました。
 気が付くと、コタツの上でうつ伏せで眠っていたらしい。

「何時だ……?」

 朋也はぼんやりしている頭をもたげながら、壁に掲げられた時計を見上げる。
 針は九時ちょうどを指している。

「もうこんな時間か……」

 そう呟いて立ち上がろうとした時、リビングのドアが開かれた。

「ただいま」

 現れたのは宏樹だった。

 朋也は髪を掻き上げながら、「あ、ああ、お帰り」と返した。

「ずいぶんと遅かったな」

「いつものことだろ?」

 宏樹はわざとらしく肩を竦めると、コタツの上に目をやった。

「あれ? 客が来てたのか?」

 無造作に置かれたふたつのマグカップを目敏く見付けて訊ねてきた。

「ああ、ちょっとな」

 朋也は適当に返答し、今度こそ立ち上がってカップを手にしてキッチンへ向かった。

「それにしても珍しいな。お前、親達がいなくても絶対にこっちに入れることってないだろ?」

 宏樹の変に鋭い発言に、小さく舌打ちする。
 もしかしたら、客が誰であるか察してしまったのかもしれない。

「――客は紫織だよ」

 宏樹に背を向けた格好で答えた。

「俺が家に帰って来たら、あいつは反対方向から歩いてきた。――泣き腫らした目をしながら」

 そこまで言うと、朋也は宏樹の反応を覗うつもりで、首だけ動かして宏樹に視線を送った。