「――宏樹君、いつまで私の側にいてくれるんだろ……」
今までほとんど口を開かなかった紫織が、不意に話し出した。
「ほんとは、宏樹君がいなくなってしまうことなんて考えたくもなかった。けど、宏樹君には他に好きな人がいるから、いつか近い将来、その人と一緒になってしまうかもしれないんだよね……。
私、ほんとに馬鹿だ……。届かないっていうのはずっと分かっていたはずなのに、それでも、宏樹君の背中ばっかり追い駆けて……。
私がこんなだから、朋也も、涼香も傷付けてしまっ……」
全て言いきらぬうちに、紫織から嗚咽が漏れ出した。
だが、今の紫織の言葉で、彼女が泣き腫らした目をしながら帰って来た理由がやっと理解出来た。
紫織はひとりで思い詰めてしまったのだろう。
どんなに願っても、手に入れることの出来ない宏樹の心、自分を一途に想い続ける朋也の気持ち。
ただ、その中に、山辺涼香の名前が出てきたことだけは分かりかねたが。
(やっぱ、俺じゃダメなんだな……)
俯き加減で涙を零し続ける紫織を見つめながら、朋也は複雑な心境であった。
紫織が宏樹を好きなように、朋也も紫織しか見えていない。
それは幼い頃からずっと変わらない。
今までほとんど口を開かなかった紫織が、不意に話し出した。
「ほんとは、宏樹君がいなくなってしまうことなんて考えたくもなかった。けど、宏樹君には他に好きな人がいるから、いつか近い将来、その人と一緒になってしまうかもしれないんだよね……。
私、ほんとに馬鹿だ……。届かないっていうのはずっと分かっていたはずなのに、それでも、宏樹君の背中ばっかり追い駆けて……。
私がこんなだから、朋也も、涼香も傷付けてしまっ……」
全て言いきらぬうちに、紫織から嗚咽が漏れ出した。
だが、今の紫織の言葉で、彼女が泣き腫らした目をしながら帰って来た理由がやっと理解出来た。
紫織はひとりで思い詰めてしまったのだろう。
どんなに願っても、手に入れることの出来ない宏樹の心、自分を一途に想い続ける朋也の気持ち。
ただ、その中に、山辺涼香の名前が出てきたことだけは分かりかねたが。
(やっぱ、俺じゃダメなんだな……)
俯き加減で涙を零し続ける紫織を見つめながら、朋也は複雑な心境であった。
紫織が宏樹を好きなように、朋也も紫織しか見えていない。
それは幼い頃からずっと変わらない。