◆◇◆◇
家族のいない室内は、どこも真っ暗で閑散としている。
暖房も切られてから相当な時間が経過しているので、外と大差ないほど、冷たい空気が全身に襲いかかってきた。
朋也は紫織をリビングへと通した。
本当は自室へ連れて行こうとしたのだが、紫織はそれを無言で拒絶した。
(信用されてないんだな、俺って)
朋也は自らを嘲るように小さく口の端を上げると、リビングの電気を点け、ファンヒーターの電源を入れた。
「コーヒーとココアがあるけど、どっちが飲みたい?」
全ての作業を終えてから、朋也は紫織に訊いた。
紫織は一呼吸置いたあと、消え入るような声で「――ココア」と返事した。
「了解」
朋也は一度、キッチンへと引っ込んだ。
ポットの中を確認すると、中に湯はあった。
だが、ほとんど冷めかけていたので、それを全てヤカンに注ぎ込み、火にかけた。
湯が沸騰するまでの間、マグカップをふたつ戸棚から取り出し、それぞれにコーヒーとココアの粉末をスプーンで入れる。
そして、グラニュー糖の入った瓶と個別包装のミルクを用意して、先にリビングのテーブルへと持って行った。
そのうち、ヤカンが、ピュー、と鳴き出した。
湯が沸いたらしい。
朋也は火を止めると、ガス台からヤカンを取り上げ、それぞれのカップに湯を注いでいった。
湯気と共に立ち上る、苦みのある芳香と甘い匂い。
それらを感じつつ、スプーンを掻き回しながら中の粉末を溶かしてゆく。
完全に溶けきったのを確認してから、朋也はそれらをリビングに運び、コーヒーを手にしたまま、ココアは紫織の前に静かに置いた。
家族のいない室内は、どこも真っ暗で閑散としている。
暖房も切られてから相当な時間が経過しているので、外と大差ないほど、冷たい空気が全身に襲いかかってきた。
朋也は紫織をリビングへと通した。
本当は自室へ連れて行こうとしたのだが、紫織はそれを無言で拒絶した。
(信用されてないんだな、俺って)
朋也は自らを嘲るように小さく口の端を上げると、リビングの電気を点け、ファンヒーターの電源を入れた。
「コーヒーとココアがあるけど、どっちが飲みたい?」
全ての作業を終えてから、朋也は紫織に訊いた。
紫織は一呼吸置いたあと、消え入るような声で「――ココア」と返事した。
「了解」
朋也は一度、キッチンへと引っ込んだ。
ポットの中を確認すると、中に湯はあった。
だが、ほとんど冷めかけていたので、それを全てヤカンに注ぎ込み、火にかけた。
湯が沸騰するまでの間、マグカップをふたつ戸棚から取り出し、それぞれにコーヒーとココアの粉末をスプーンで入れる。
そして、グラニュー糖の入った瓶と個別包装のミルクを用意して、先にリビングのテーブルへと持って行った。
そのうち、ヤカンが、ピュー、と鳴き出した。
湯が沸いたらしい。
朋也は火を止めると、ガス台からヤカンを取り上げ、それぞれのカップに湯を注いでいった。
湯気と共に立ち上る、苦みのある芳香と甘い匂い。
それらを感じつつ、スプーンを掻き回しながら中の粉末を溶かしてゆく。
完全に溶けきったのを確認してから、朋也はそれらをリビングに運び、コーヒーを手にしたまま、ココアは紫織の前に静かに置いた。