◆◇◆◇◆◇
友人達と遊び回っていたら、いつの間にか陽がすっかり暮れていた。
家に着いても両親はいない。
親戚の叔母が急に倒れたらしく、朝早くから出かけてしまっていたのだ。
その時、今日は帰って来られないだろう、とも言っていた。
当然ながら、宏樹も仕事で帰りが遅い。
(今日はなに食お……)
今晩の夕食のことを考えながら、家の前の門を開けようとした時だった。
ちょうど朋也が帰って来た反対側から、紫織が俯き加減に歩いて来るのが目に付いた。
「紫織!」
朋也が呼ぶと、紫織はハッとしたように顔を上げる。
朋也は門から手を離し、紫織の元へと近付いた。
同時に、彼女の表情にいつになく違和感を覚えた。
「――目、赤くないか?」
すぐにその正体を見極めた朋也は訊ねた。
紫織は何も答えない。
その代わり、神妙な面持ちで再び俯いてしまった。
そうだよ、と言わんばかりに。
「――大丈夫か?」
もう一度訊ねると、今度はゆっくりと首を縦に振った。
(相当無理してんな)
朋也は眉根を寄せながら紫織を見つめた。
「そんな顔で帰ったら、小母さん達を心配させちまうだけだ。――俺ンちに寄ってけ」
そう言うと、朋也は紫織の腕をそっと掴んだ。
いつもであれば、『気安く触んないで!』と怒るか、振り払うかのどちらかなのだが、泣き疲れてしまったのか、紫織は全く抵抗しなかった。
それはそれで嬉しいのだが、半面で、調子が狂ってしまうというのも本音であった。
(けど、こんなチャンスは滅多にないだろうし)
心の中で自分に言い聞かせると、腕を引いて紫織と共に家の中へ入った。
友人達と遊び回っていたら、いつの間にか陽がすっかり暮れていた。
家に着いても両親はいない。
親戚の叔母が急に倒れたらしく、朝早くから出かけてしまっていたのだ。
その時、今日は帰って来られないだろう、とも言っていた。
当然ながら、宏樹も仕事で帰りが遅い。
(今日はなに食お……)
今晩の夕食のことを考えながら、家の前の門を開けようとした時だった。
ちょうど朋也が帰って来た反対側から、紫織が俯き加減に歩いて来るのが目に付いた。
「紫織!」
朋也が呼ぶと、紫織はハッとしたように顔を上げる。
朋也は門から手を離し、紫織の元へと近付いた。
同時に、彼女の表情にいつになく違和感を覚えた。
「――目、赤くないか?」
すぐにその正体を見極めた朋也は訊ねた。
紫織は何も答えない。
その代わり、神妙な面持ちで再び俯いてしまった。
そうだよ、と言わんばかりに。
「――大丈夫か?」
もう一度訊ねると、今度はゆっくりと首を縦に振った。
(相当無理してんな)
朋也は眉根を寄せながら紫織を見つめた。
「そんな顔で帰ったら、小母さん達を心配させちまうだけだ。――俺ンちに寄ってけ」
そう言うと、朋也は紫織の腕をそっと掴んだ。
いつもであれば、『気安く触んないで!』と怒るか、振り払うかのどちらかなのだが、泣き疲れてしまったのか、紫織は全く抵抗しなかった。
それはそれで嬉しいのだが、半面で、調子が狂ってしまうというのも本音であった。
(けど、こんなチャンスは滅多にないだろうし)
心の中で自分に言い聞かせると、腕を引いて紫織と共に家の中へ入った。