◆◇◆◇
街中は、どこもかしこもクリスマスムード一色となっている。
派手に装飾が施され、定番のクリスマスソングがひっきりなしに流れる。
そんな中を、紫織と涼香はしばらく歩き回っていたが、涼香が空腹を訴え出したので、手頃なファーストフード店へ入って昼食を摂ることにした。
「もう十二月なんだよねえ」
空いていた席に落ち着くなり、涼香が口を開いた。
「でも、クリスマスだからって、特別なことなんてなんもしないけどさ。ちっこい頃は、毎年、サンタさんからのクリスマスプレゼントが待ち遠しかったけど、さすがにこのトシになってまではねえ。
せいぜい、家族揃って、ちょっといいご馳走とケーキを食べるぐらいでさ」
「まあ、確かにそうだね」
これは紫織も涼香に同意した。
所詮、クリスマスなんてものは子供か恋人同士のためのイベント。
〈子供〉とも呼べなくなった年頃であり、報われることのない恋をし続けている紫織には、無縁としか言いようがない。
もちろん、それは涼香も同じだ。
「――上手くいかないね……」
ほとんど無意識に口にしていた。
涼香はテリヤキバーガーの包装紙を剥がそうとして、ピタリと動きを止めた。
「――大丈夫?」
いつになく深刻な表情で涼香が訊ねてくる。
紫織はそこで、ハッと我に返った。
「え? ああ、別に大丈夫だよ」
「ほんとに?」
「ほんとだってば! もう! そうやって勘繰るのやめてよ!」
紫織は眉根を寄せながら、いそいそと自分のチーズバーガーを開けた。
水滴を吸い込んだバンズは重みがあり、口に入れてみると水っぽさを感じる。
決して不味いわけではないが、やはり、味より安さがウリなだけあるなあ、とついついよけいなことを考えてしまう。
街中は、どこもかしこもクリスマスムード一色となっている。
派手に装飾が施され、定番のクリスマスソングがひっきりなしに流れる。
そんな中を、紫織と涼香はしばらく歩き回っていたが、涼香が空腹を訴え出したので、手頃なファーストフード店へ入って昼食を摂ることにした。
「もう十二月なんだよねえ」
空いていた席に落ち着くなり、涼香が口を開いた。
「でも、クリスマスだからって、特別なことなんてなんもしないけどさ。ちっこい頃は、毎年、サンタさんからのクリスマスプレゼントが待ち遠しかったけど、さすがにこのトシになってまではねえ。
せいぜい、家族揃って、ちょっといいご馳走とケーキを食べるぐらいでさ」
「まあ、確かにそうだね」
これは紫織も涼香に同意した。
所詮、クリスマスなんてものは子供か恋人同士のためのイベント。
〈子供〉とも呼べなくなった年頃であり、報われることのない恋をし続けている紫織には、無縁としか言いようがない。
もちろん、それは涼香も同じだ。
「――上手くいかないね……」
ほとんど無意識に口にしていた。
涼香はテリヤキバーガーの包装紙を剥がそうとして、ピタリと動きを止めた。
「――大丈夫?」
いつになく深刻な表情で涼香が訊ねてくる。
紫織はそこで、ハッと我に返った。
「え? ああ、別に大丈夫だよ」
「ほんとに?」
「ほんとだってば! もう! そうやって勘繰るのやめてよ!」
紫織は眉根を寄せながら、いそいそと自分のチーズバーガーを開けた。
水滴を吸い込んだバンズは重みがあり、口に入れてみると水っぽさを感じる。
決して不味いわけではないが、やはり、味より安さがウリなだけあるなあ、とついついよけいなことを考えてしまう。