賑やかだったり、クラスの中心で騒ぐタイプの女子ではないけど、かと言って地味なほうというわけでもない。

落ち着いてはいるけど、仲の良い友達の輪の中では、井原さんは真ん中にいることが多いような気がする。

成績も良いらしく、クラス内では皆から一目置かれている感じだ。男女問わず人当たりがいい。普段からぼーっとしている僕からすると、なんだかまぶしい人だった。


ビニール傘1つでああだこうだ言ってる僕が、変なのかもしれない。

僕だって、大した傘を使っているわけじゃない。安物の、地味な深緑色の傘だ。もう何年使っているかわからない。金属部分には、ところどころ錆だって浮かんでいる。井原さんは、何もボロボロのビニール傘を使っているわけじゃない。


でも、やっぱり気になってしまうのだ。別に、ビニール傘を使うこれといった理由なんてないのかもしれない。

だけどここ1ヶ月、僕が主に考えていることといったら井原さんのビニール傘なのだ。我ながらちょっと気持ち悪い執着心だとは思うけど、こんなに気になるということは、やっぱり何か理由があるんじゃないかと思ってしまう。

もはやただの疑問じゃなくて、願望なんだろうか。何か理由があってほしい、そしてそれを知りたいという、僕の好奇心。


いや、やめよう。本当にだんだん自分が気持ち悪くなってきた。前方の信号も、赤く光っている。止まれ。このおかしな思考、止まれ。