「えっ、あっ、いいよいいよ…!大丈夫だから」
「でも、傘見つからないんでしょ」
「いや…よくよく考えたら、傘差すほどじゃないかも」
「河野くん、ごまかすの下手」
「いやだから、ごまかしてるわけじゃなくて…」
だって、これは、俗に言う相合い傘というやつじゃないか。周りに人がいないからって、それはさすがに欲張りすぎだ。
ビニール傘の秘密を知れただけでも、もう一生分の運を使い果たしたような気持ちなのに、それ以上のことなんてあっちゃいけない。バチが当たりそうだ。死んだ後、僕は地獄に落ちてしまうかも知れない。
「ねえ、すごい表情してるよ。なんか死んじゃいそうな表情だよ」
「いや、ちょっと、死後の想像を…」
「何言ってるの」
楽しそうに笑う井原さんの声が、静かに降る雨と調和して、とても心地良かった。
諦めが肝心、という言葉もある。僕はそう自分に言い聞かせて、折りたたみ傘の捜索を諦めた。リュックを背負い直す。
僕はあまり背が高くない。井原さんとほぼ同じくらいだ。こういう時、普通は男子が傘を持ってあげるんだろう。つくづく、自分は残念だなと少し落ち込む。
「でも、傘見つからないんでしょ」
「いや…よくよく考えたら、傘差すほどじゃないかも」
「河野くん、ごまかすの下手」
「いやだから、ごまかしてるわけじゃなくて…」
だって、これは、俗に言う相合い傘というやつじゃないか。周りに人がいないからって、それはさすがに欲張りすぎだ。
ビニール傘の秘密を知れただけでも、もう一生分の運を使い果たしたような気持ちなのに、それ以上のことなんてあっちゃいけない。バチが当たりそうだ。死んだ後、僕は地獄に落ちてしまうかも知れない。
「ねえ、すごい表情してるよ。なんか死んじゃいそうな表情だよ」
「いや、ちょっと、死後の想像を…」
「何言ってるの」
楽しそうに笑う井原さんの声が、静かに降る雨と調和して、とても心地良かった。
諦めが肝心、という言葉もある。僕はそう自分に言い聞かせて、折りたたみ傘の捜索を諦めた。リュックを背負い直す。
僕はあまり背が高くない。井原さんとほぼ同じくらいだ。こういう時、普通は男子が傘を持ってあげるんだろう。つくづく、自分は残念だなと少し落ち込む。