廊下の突き当たりを左に曲がると、ざわつきの正体である生徒昇降口が見えてくる。

僕は壁際に身を寄せ、背負っているリュックをぐるりと前に持ってきて、赤ちゃんを抱っこするような形で抱えながらチャックを開けた。


「怒」は無くても、「哀」はある。今の気持ちがまさにそれだ。

雨は、好きじゃない。単純に、憂鬱な気持ちになる。でも、きっとこれに関してはみんな同じだろう。靴を履き替えながら、友達と言葉を交わしながら、その表情はやっぱりみんな、いつもよりワントーン落ちている。


雑然と荷物が詰め込まれたリュックの中に手を突っ込んで、がさごそと荒らす。整理整頓が苦手という自分の短所に対しても、哀しいような諦めに似たような気持ちになる。


リュックの底に埋もれていた折りたたみ傘を無事発掘した僕は、ようやく壁際から離れて人の流れに合流した。

行き帰りの時間で雨が降るかどうか微妙な時は、大きい傘じゃなくて折りたたみ傘を持ち歩くようにしている。降ってなくても手が塞がるから、大きい傘は極力持ち歩きたくない。かと言って折りたたみ傘も好きじゃない。広げた後、たたむのがものすごく苦手なのだ。


とにかく、しつこいようだけど、僕は雨も傘も好きじゃない。