「もう限界?」

「ああ…これ?」

「前回の点検の時も気付いてはいたんだけどね。使い続けてるとこんな風になっちゃうんだ」

「あの、申し訳ないんだけど……交換、って、どうすればいいんだっけ」


同じ美化委員なのに本当に自分は頼りないなと思う。でも、同じ美化委員でも、僕と井原さんは立場が違う。

井原さんには、委員長という大きな肩書きがついている。

他の委員会と比べたら美化委員は目立たないほうかもしれないけど、委員長という言葉にはなんだか重みがある。だからつい、頼ってしまう。

実際、委員会の集まりの時に場を仕切る井原さんの姿は、まさに委員長にふさわしい。僕が知っている人間の中で、一番、そつがない。


「1階の階段下に倉庫があって、右のほうに新しい清掃用具が揃えて置いてあるの。そのすぐ近くに、廃棄って書いてある段ボール箱があるから、このちりとりはその中に入れておけば大丈夫」

「わかった」

「新しいちりとりには、これと同じようにクラス名書いといてね。油性ペンで」

「はい」


思わず返事が敬語になった僕に、井原さんはくすりと笑った。