「どうなっちゃうんだろう、私」と今日子は言った。
 「まずは、武術を鍛えることさ」たけしが言った。
 スコープオンの話では、タイムクラスターは、いつでも使えるわけでなく、相手の體力を奪ってから、初めて発揮される。

 「兄さんに會わせてよ?」と今日子が頼んだが、スコープオンが斷った。
 「なぜ、會えないの?」
 「お前の兄は、ダークマターの捕虜となっている。」そして、続けて
 「敵の本拠地に、入り込むには、まだ、早い」スコープオンが答えた。

 沈黙が、少し流れた。
 「もうこれ以上、戦いたくない。いやなの。怖いの、死にたくないの。」
 「だったら、今のうちに、バーチャル世界へ帰ることだ。」スコープオンは冷靜に答えた。
 「家に帰りたい」今日子は小さな聲で言った。

 「しかし、お前は、タイムクラスターの力に目覚めてしまった。」スコープオンがそう言って首を振った。

 「リアル世界でも、戦いは、続く。覚悟を決めろ。今日子」
 スコープオンの言葉に、今日子は震えた。

 「これから、訓練施設に行く。タイムクラスターの練習だ。今は、モンスターでも、もともとは、生き物だった。救えるのは、お前しか、いない。」
 「タゲットは、倒せるの?」今日子は、尋ねた。
 「やってみれば、わかる。」スコープオンが、元気付けるように言った。

 「言ってるうちに、タゲットが、3體きたぞ!」たけしは言った。
 「うそ?」今日子はのけぞった。
 「訓練では、なくなった。オデッセイコロシアムで闘う。」スコープオンが時間稼ぎに、目くらましの砂ぼこりを、起こした。

 オデッセイコロシアム。観戦者がいて、昔は、闘技場として栄えた。
 「まるで、見せ物小屋」今日子は言いつつも、臨戦態勢に、ついた。
 
 「お嬢ちゃん、遊びも終わりだ。タイムクラスターなんて、まぐれだ。」
 「後悔させてやる。」と今日子は自分を奮い立たせた。

 「でも、三匹は、こちらが不利だわ」と思った。
 「スコープオン、援護して」
 「まかせろ。」
 3匹が三角陣形で迫ってきた。

 「竜巻よ、行けー」
 左右のタゲットに、竜巻がぶつかった。

 「この、小娘」
 「ここよ」いつのまにか、タゲットの背後をとった。3つの頭を切り取った。
 ドスン。前向きにタゲットは、倒れた。
 今日子は、剣先をタゲットに向けた。
 
 すると、タゲットの形が消えて、馬が出てきた。
 「やった」今日子は、そう言って馬に乗った。

 「兄貴格を、倒したな、小娘 
 「タゲット、有利は、こちらに変わったわ。」

 「おい、行くぞ!」前後からタゲットが2体攻めてきた。
 馬は、勢い良く、タゲットをジャンプして超えた。

 「伸びろ、剣」剣はタゲット2体を串刺しにした。
 「これを使え!」スコープオンが、自分の剣を投げた。

 二体のタゲットを、まとめてその頭を切り取った。
 剣先を二体に向けた。1匹は猫に変わった。しかし、もう一体が、復活しようともがいている。

 たけしがなっている剣をとり、くっつこうとする頭を再度切った。

 「これで、終わりだと思うなよ!」そう言って、消滅し、犬に変わった。

 今日子は、その場に座り込んだ。
 「タゲットを、やっつけた。」満面の笑みを浮かべた。