気付いたら、そこは、別世界であった。まるで、ドットで描かれた世界。

 「ここは、どこ?」今日子は、たけしに尋ねた。
 「ここは、バーチャルリアリティーだ。リアリティな世界とは、似ているが、違う。」たけしは、答えた。

 「なんで、私ここにいるの?おまけに背も伸びてる。たけしの仕業ね!」
 「知らねー」3度目の知らねー。

 見渡せば、建物がたくさん立っている。ただし、人の姿は見えない。ここは、誰も知らない世界だ。

 「帰りたい」と今日子はつぶやいた。
 「ここに、お前の兄貴がいる。」とたけしは、そっとささやいた。

「えっ」今日子は、ますます混乱した。

 ツカ、ツカと誰かが近づいてくる。
 「誰?」今日子が尋ねた。

 「私に見覚えはないか?」男は言った。
 よく見たら、現実生活であった男だった。
 「あの時の、スマートウォッチをくれたおじさん」

 「説明すると、長くなる。お前のここでの名は、テレサ・セブン。ここでは女神として、存在している。」

 確かに、よくわからない。でも、ここに別れた兄さんがいる。

 「なにをすれば、お兄さんに会えるの?」と今日子は尋ねた。

 「この世界は、クルチャーと呼ばれる人工生命体に、支配されている。そいつは、人であって、人ではない。」

 「人工生命体」と聞いて、アンドロイドかしら?と今日子は思った。

 「奴は、不死身だ。決して倒せない。」
と男は言った。

 クルチャーとは、何者なのか?人が作った人とは。何のために。

 「ここには、タゲットと言われる兵隊がいる。」
 
 「タゲット」今日子は、つぶやいた。

 とその時、腕は千手観音のように、多くあり、頭は3つあるタゲットが、現れた。

 「怖い」今日子は、叫んだ。
 その子を、こちらへ渡してもらう。」とタゲットは言った。

 「ほう、面白い」男は言った。
 タゲットは、飛び上がり、男を攻撃した。
 男は、後退りして、体勢を整えた。
 「もらっていくぞ」と今日子を鷲掴みにした。
 「助けてー」今日子は、腕をぐるぐる回した
 「呼んだか?」
 「遅い」と今日子。

 身に付けたコミュニケーターは、どんな形にも、この世界では、なれる。

 たけしは、剣になった。
 「何?」

 「これで、奴を倒せ。」
 「無理ー」
 「お前しか使えない剣だ。頭を狙え!」

 その時、男がタゲットにぶつかって、今日子を解放した。

「お笑い草だ」タゲットは笑った。

 今日子は、祈った。
 「この世界から、助けてください」
 タゲットも腰から剣を出した。
 剣が二本ある。

 「まあ、死体でも、かまわんか?」
 今日子は、走って逃げた。とりあえず体勢を有利にするために。

 「えっ」いつもの10倍早く走れる。
 「あそこ!」というと、ビルの3階へ飛んだ。

 タゲットも、難なく追ってきた。
 「手間を取らせるなよ」
 立体物が多い屋上。タゲットは、今日子を見失った。

 まともに戦っても、今のわたしには不利だ。

 消火栓を持ちながら、背後から、タゲットに近づく。
 「こっちよ」と今日子は言った。

 タゲットの振り向きざまに、消化液を吹きかけた。滝のような液が、タゲットの顔に降り注いだ。

 「くたばれ」
 今日子は3つの頭を、なぎ落とした。
 ドスンとタゲットは、後ろ向きに、倒れた。

 「こいつ何者なのか」今日子は、思った。その時、意識がもうろうとして、気を失った。