「え? 芋煮会?」
一心さんのお父さんから電話がかかってきたのは、昼営業の終わりのこと。
「ああ、親父か」と話し始めたときは少しうれしそうにしていたのに、今の一心さんは困惑気味だ。
「そりゃあ、そうだが……。少し考えさせてくれ」
そう言ってお店の電話を切ると、一心さんはふーっと息を吐き出しながら考え事をしていた。
「一心さん、『いもにかい』ってなんですか?」
拭き掃除をしながらたずねると、一心さんは
「……ああ、そうか。おむすびは知らないのか」
と意外そうな顔をしつつ、丁寧に説明をしてくれた。
「芋煮会とは、東北地方にある風習なんだ。芋を鍋で煮るから、芋煮会。秋に河原で催されることが多いな」
「そんな行事があるんですね、初めて知りました」
茨城では、秋の行事といえば芋ほり遠足だったけれど、芋煮も収穫を祝うイベントなのだろう。
「祖母が宮城県出身だということは話したと思うが、それで親父も、町内会の人を集めて毎年芋煮会を開催していたんだ。『あじさわ』主催で、日ごろの感謝をこめて芋煮や鍋料理を振る舞っていた」
「楽しそうですね! それじゃもしかして、その芋煮会へのお誘いだったんですか?」
「いや、違う。お前のところでも、『こころ食堂』主催で芋煮会をやってみろと言われた。まごころ通りのメンバーや、お客さまを集めて日頃の感謝を伝えたらどうだ、と……。俺はそういったサービス精神に疎いから心配だ、とも言われた」
一心さんにサービス精神がないとは思わないけれど、そういった行事を先導して仕切るタイプじゃないということはわかる。お父さんなりにこころ食堂のことを気にかけてくれているんだな。
一心さんのお父さんから電話がかかってきたのは、昼営業の終わりのこと。
「ああ、親父か」と話し始めたときは少しうれしそうにしていたのに、今の一心さんは困惑気味だ。
「そりゃあ、そうだが……。少し考えさせてくれ」
そう言ってお店の電話を切ると、一心さんはふーっと息を吐き出しながら考え事をしていた。
「一心さん、『いもにかい』ってなんですか?」
拭き掃除をしながらたずねると、一心さんは
「……ああ、そうか。おむすびは知らないのか」
と意外そうな顔をしつつ、丁寧に説明をしてくれた。
「芋煮会とは、東北地方にある風習なんだ。芋を鍋で煮るから、芋煮会。秋に河原で催されることが多いな」
「そんな行事があるんですね、初めて知りました」
茨城では、秋の行事といえば芋ほり遠足だったけれど、芋煮も収穫を祝うイベントなのだろう。
「祖母が宮城県出身だということは話したと思うが、それで親父も、町内会の人を集めて毎年芋煮会を開催していたんだ。『あじさわ』主催で、日ごろの感謝をこめて芋煮や鍋料理を振る舞っていた」
「楽しそうですね! それじゃもしかして、その芋煮会へのお誘いだったんですか?」
「いや、違う。お前のところでも、『こころ食堂』主催で芋煮会をやってみろと言われた。まごころ通りのメンバーや、お客さまを集めて日頃の感謝を伝えたらどうだ、と……。俺はそういったサービス精神に疎いから心配だ、とも言われた」
一心さんにサービス精神がないとは思わないけれど、そういった行事を先導して仕切るタイプじゃないということはわかる。お父さんなりにこころ食堂のことを気にかけてくれているんだな。