「はぁっ、はぁっ、はぁ! あづ!」
 息を切らして、潤が病室に入ってくる。
「潤じゃん! どうした?」
 潤の声が聞こえなくて、俺は慌ててドライヤーを止めた。
「どうしたじゃねぇよ! LINEも返信こねぇし家にもいねぇからまさかと思ったが……本当にお前は馬鹿か! 風邪引くぞ!」
 潤が言ったのは、さっき俺が言ったのと同じような内容だった。
「それ、さっきなえにも言われた」
「……なえ。悪い。あづが手間かけた。服も貸してくれたんだな、ありがとう。正直、ちょっと見直したわ」
 俺の頭を撫でて、潤は言う。
 たとえ親友の世話をしてくれたからだとしても、撫でられたのが嬉しくて胸が熱くなった。同年代くらいの奴らに撫でられたのなんて初めてだ。
「別に。あんな姿見たら誰だって心配するだろ」
 顔が赤いのを隠すように顔を背け、素っ気なく応じる。
「そうかもしんねぇけど、言わせて。見ての通りこいつすぐ突拍子もないことやらかすからさ。本当に助かった。ありがとう」
「お前人をガキみたいに……」
「ガキだろ! たっく! お前は本当に無茶しかしねぇんだから!」
 そういい、潤はあづにデコピンをする。
「痛っ⁉」
 ……楽しそうだな。そう思った俺は、少しだけ笑った。
「……なえ」
 潤が俺を見る。
「なえ、笑った?」
 額をおさえながら、あづは嬉しそうに目を輝かせる。
「そっ、そんなこと……」
 慌てて俺は口をおさえる。
「なえってよく顔背けたり隠したりするよな。綺麗な顔してんのに」
 口を抑えている手を掴んで、あづは言う。顔から手をどかされ、ベッドの上に置かれた。
「はっ⁉ 気持ち悪いだろこんな女子みたいな顔!」
 思いっきり叫び返す。
「……いや、綺麗だろ。漫画でも美少年とかいるし」
 あづに賛同するように潤も言う。
 ――綺麗だって? この顔のせいでもう六年以上いじめられてきたのに? そんなのとても信じられない。
「……あづはまだしも、なんで潤まで言うんだよ。俺のこと気にくわないんじゃなかったのか」
 仲良くしねぇって言ってたし。
「見直したっていっただろ。それに、顔の話してんだからそれは関係ねぇよ」
「そうかもしんねぇけど、本当に俺の顔は全然綺麗じゃ……」
「綺麗だっつーの! まつげ長いし、鼻筋だってすっと通ってるしさ! うらやましがる奴たくさんいんじゃねぇの?」
 声を荒げて、あづはいう。