「朝か……」
 気が付けば朝になっていた。いつの間にか泣き寝入りしていたらしい。
 目を擦って涙を拭っていたら、また頭痛がおしよせてきた。
「痛っ!」
「赤羽くん、大丈夫っ!?」
 ナースコールを押すと、すぐに看護師と穂稀先生がきてくれた。渡された薬を飲むと、徐々に頭痛が収まってきた。
「はぁ……」
 頭を押さえながらため息をつく。
 自分は病に侵されていることを今更のように実感して、冷や汗が出た。
「薬、多めに持ってきたから棚の上に置いておくね。また痛くなったら飲んで」
 病室の端に置かれた棚の上に薬と水の入ったコップを置いて、先生は言う。
 棚に入ってるのは、替えの病衣と自殺した時に着た服だけだ。寝るためのベッドに、医者や見舞いに来た人が座る丸椅子、ゴミ箱、窓、それに花瓶。――必要最低限のものしかここにはない。遊べる道具もなければ、大好きな姉もいない。そんなせまい世界で、俺は死んでくのか……。寂しいな。そんなこと俺が考えちゃダメだけど。死ぬしかないんだし。
「赤羽くん、病室に監視カメラをつけてもいいかな? またいつ症状が起きるかわからないから、念のために」
 先生が真剣な顔で言う。
「……いいですよ。先生、昨日はすいませんでした。その本も」
 ゴミ箱にある本を顎で示す。
「大丈夫だよ。急に病気のこといった私も悪いからね。少しは落ち着いた?」
「……はい」
「そ。ならよかった。赤羽くん、もう一度聞くけど、本当に手術はしなくていいの?」
 先生は首を傾げ、心配そうに俺の顔をのそきこむ。
「……しなくていいです」
「よく考えな。今はしなくていいって本気で思ってるのかもしれないけど、考え方が変わることもあるから。ね?」
「……分かりました。後先生、俺が重篤なの親戚には言わないでください。……たぶん、早く死ねって言われるだけだと思うので」
 先生は目を見開いて俺を見た。