『これは私へのご褒美のご飯だ』とん汁にそう想った。

メタボと過食症と不眠症を併発するミドルエイジャーの私に口の悪い妹のアケミは毎晩用意してくれる。
それは具だくさんのお味噌汁。自分専用の冷蔵庫も無いため料理のできないマキにとっては唯一野菜をとる機会になる。
一日一回は野菜を食べてねと、私を『あにぃ』と慕う、バットを振り回す怒らせると怖い『いもうと』に懇願されたから、妹がわけてくれる、お味噌汁は毎晩の楽しみでもある。浸潤癌サバイバーなので、癌サバイバーの医師の著作によると新鮮な野菜を味噌汁にして、新鮮な果物をスムージーにして、毎日摂取すると良いらしい。肉製品と乳製品は何故か禁じられている。そんな高価でストイックな食事は、無職の私には無理なのでたまに、百パーセント手しぼりのミカンジュースやトマトを買って食べたりしている。昔はイチゴにはまってたなと思いながら、濃縮還元の十倍はするミカンジュースをカップ一杯味わいながら飲みほす。そんな私の日々にささやかな幸せが舞い込む。
「今日はとん汁だよ」妹がせっせと夕食の支度をする。その味の濃厚さを思い出し「私も欲しい」と言ってみた。「わかった」と了承した妹は私の分もよそってくれた。湯気の立つ暖かいソレを私は有りがたく口に運ぶ。じゅわ~と染み込む味噌と豚肉の味わい。染みる大根や豆腐。私は味に五月蝿くない冷凍食品系ジャンクフード派だが『なんて美味しいんだ』と想いながら完食した。この真冬、体が芯からあったまった。まだ食べたりないが、唇を肉味噌汁でてからせた私は妹にごちそうさまとありがとうと伝えた。

ぶっきらぼうの妹がどう思ったかは別の話……