祖母の言うとおりだ。私の好意は、少し歪んでいたように感じる。

　結果、新人パティシエは仕事をさぼるようになってしまった。

　よい結果をもたらす好意とは、どんなものなのか。
　めまぐるしい日々を過ごすなかで、それすらわからなくなっている。

　このままでは、私という存在がすり減ってしまうだろう。
　これ以上、自分をなくしたくない。

　今この瞬間に、この先どうしたいかという気持ちが、固まってしまった。長年勤めていたお店を辞め、祖母の家の管理をすると。

　辞めると言ったら、引き留められた。良心は痛んだが、私の人生は私のものだ。他人の都合で変えるなんて、あってはならないだろう。
　可能な限り引き継ぎをして、退職した。

　父と住んでいたマンションは、そのままでいいだろう。多分、父が管理する。
　服や生活必需品を詰めた旅行鞄と共に、私は東京から脱出する。

　そして、新幹線で二時間の地にある、祖母の家を目指した。

　◇◇◇