つごもりさんは、庭の雑草抜きをしているらしい。最近、オープンテラスも始めたのだ。そのため、庭は常にきれいにしておかなければならない。

 まあ、オープンテラスといっても、縁側に座布団を置いているだけのものだけれど。

 祖母の家周辺は犬の散歩コースにもなっていて、気軽に立ち寄れるようにしてみたのだ。犬のお菓子も用意しているので、犬のほうからぐいぐい紐を引いて来たがるという、なんともありがたい状況になっている。

「そういえば――」

「はい?」

「昨日着ていたエプロンに頑固なソースが付着していたので、しみ抜きしておきました」

「それはそれは、どうもありがとうございます」

 良夜さんは毎日洗濯を担当していて、ただ洗うだけでなく、アイロン掛けや生地の状態なども細かく気にしてくれる。

 洗濯物をお店の服みたいにきれいに畳んでくれるので、毎日ありがたや~と手と手を合わせておがんでしまうのだ。

「何かシミを作ったら、報告してください。しみ抜きは、スピードが命なので」

「はい、肝に銘じておきます」

 良夜さんと話していると、母親がいたらこんな感じなのかな、と思ってしまう。物心ついたときから母はいなかったので、想像に過ぎないけれど。

 そんなことを考えていたからか、この前うっかり良夜さんを「お母さん」と呼んでしまった。その場にいたもちづき君に爆笑されたのは、言うまでもない。

「では、作りましょうか」

「はい」

 笹だんご作りに取りかかる。まず、ボウルに白玉粉と上新粉、砂糖を入れ、それに水で溶いたよもぎ粉を注いで混ぜる。生地がまとまってきたら、しっかり捏ねてなめらかにしていく。

生地が仕上がったら、一口大に分けてあんこを包む。この状態となった生地を笹に包むのだ。

「包む前に、生地がくっつかないように、笹にうっすらと油を塗ります」

 二枚の笹で包み込み、乾燥イグサで縛ったものを蒸し器で三十分ほど加熱したら“笹だんご”の完成である。

 完成した笹だんごを、もちづき君に持って行った。今日は、月曜日発売の週刊少年雑誌を熱心な様子で読んでいた。

同じく、隣には少女向けの月刊誌も置かれている。漫画は男女向け問わずに読んでいるようだ。

 ちなみに本は、つごもりさんが隣町まで自転車を使って買いに行っているようだ。いつも恥ずかしそうに、本を持ち帰っている。

「もちづき君、笹だんごができました」