三品目は、塩茹でした菜の花を、砂糖、醤油で和える。それに、煎って香ばしくしたくるみを加えて混ぜたら、“菜の花のくるみ和え”の完成だ。

 四品目はお餅を焼き、その間に大根をおろす。お餅が柔らかくなったら、お皿に盛り付け、大根おろしを乗せる。上から醤油をかけ、七味唐辛子をふりかけ、小口切りにしたネギを散らす。“からみ餅”の完成だ。

 最後に、煮えたジャガイモの中に味噌を溶き入れ、沸騰する前に火を消す。

「で、できた……!」

 一時間半ほどで、夕食は完成となる。満月大神に急かされたからか、いつもより手早くできた気がした。

 食卓に運ぶ前に、良夜さんとつごもりさんに声をかけたほうがいいだろう。

 どこにいるのかと探していたら、障子の向こうに子犬のシルエットが見えた。良夜さんだろう

「あの、良夜さん」

『何?』

 スッと、わずかに障子が開かれた。白くモフモフした小型犬となった良夜さんが、私を見上げる。

『ちょうどよかった。これを、部屋に持って帰ってください』

「はい?」

 何を持って帰るというのか。障子を開いて確認したら、良夜さんが洗濯物の山を額で押してくる。一番上には、パンツが丁寧に畳んであった。

「きゃあっ!」

 慌てて回収する。どうやら、洗面所に置きっぱなしになっていた着替えを、洗濯してくれていたようだ。

『何を恥ずかしがっているのですか?』

「いや、だって、パンツが……!」

『私から見たら、どれもただの布です』

「た、ただの布……!?」

 言われてみれば、ただの布に間違いない。けれど、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

『まさか、私が“男”の姿を取っているから、恥じているのですか?』

「男性でも女性でも、自分以外にパンツを見られたら、恥ずかしいものです」

『人間の羞恥心は、理解できないです』

 なんせ、彼は“狛犬”だ。人ではない。

「あの、下着は、自分で洗いますので」

『また、面倒なことを自ら買って出て』

 呆れられてしまったが、こればかりは譲れない。なんとか頼み込み、私は下着類の独立を勝ち取った。

 ……いや、良夜さんの言うとおり、仕事が増えるだけなんだけれど。

『それよりも、何用だったのですか?』

「あ、そうでした。食事の支度が調ったのですが」

『私とつごもりは、夕食は食べないですよ』

「え、そうなのですか!?」