三段目の食材をすべて下ろし、佐々木さんからもらったイチゴと、カゴの中の食材を並べていく。

「神饌は、夕食の材料に、する」

「わかりました。では、何か作りますね」

「手伝う」

「お願いします」

 台所に移動していたら、背後からゴトリ! と大きな物音がした。

 振り返ると、黒い大型犬と化したつごもりさんの姿が。ひっくり帰ったカゴを帽子のように被った姿で、脱げた服の真ん中で呆然としていた。

 すっかり忘れていたが、夜になるとつごもりさんと良夜さんは、狛犬の姿になるのだ。なんでも、月夜の晩は姿を偽れなくなるらしい。

「あ、えっと……大丈夫ですか?」

『平気。それよりも卵』

 確認したが、布に包んでいた卵は無事だった。つごもりさんとふたり、ホッと胸をなで下ろす。

『ごめん。夕食のお手伝い、できない』

「いいですよ。ゆっくりしていてください」

 つごもりさんはしょんぼりしながら、脱げた服を銜えてこの場を去って行く。

 いじらしいというか、なんというか。
 と、つごもりさんを気にしている場合ではない。夕食の準備に取りかからなくては。

 台所にひょっこり顔を覗かせたのは、青年の姿になった満月大神だ。
 月の満ち欠けで姿が変わると話していたが、昨日より若くなっているような?

 もうすぐ新月だからだろう。

「花乃、お腹が空いた」

「可能な限り素早く用意します~」

 その返しに満足したのか、満月大神は台所から去って行った。