つごもりさんは顔色を青くし、良夜さんは明後日の方向を見る。聞いてはいけない話だったのか。
「――漫画を読んで、テレビを見て、一日中ぐうたらしているだけだけど、何か?」
もちづき君がひょっこりと、台所に顔を覗かせた。
「なんだ、まだまんじゅう、できていないんだ」
「あと少しですね」
「ふーん」
それはそうと、神様は働かないらしい。それが、お決まりなのだとか。
「あの、漫画というのは?」
「あんたの父親のコレクションだよ。古いものばかりだけれど、なかなか面白いね。それから、幸代のコレクションもなかなか興味深いよ」
「お祖母ちゃんのコレクション、ですか?」
「うん。韓流ドラマ。どろどろした人間の感情が、よく表現できている」
そういえば、誕生日プレゼントに何回か韓流ドラマのボックスを買ってあげたような。まさか、神様が漫画やドラマを見ているなんて。
「良夜、おやつは?」
「こちらに」
良夜さんが開いた棚には、スナック菓子の袋が大量に詰められていた。カップ麺も山のように積まれている。
「こ、これは……!?」
「幸代が教えてくれたんだ。体に悪いから、一週間に一度だけ食べていいってさ」
私が子どものときは、スナック菓子なんて一度も出さなかった。いったい、どういう心境の変化だろうか。
「幸代も、昔のように体が動かなかったんでしょう?」
「ああ、なるほど……っていうか、自然に私の考えていることと会話しましたね?」
「わざわざ聞き返すのも、まどろっこしいだろうが」
そう言って、もちづき君は“ジャガイモチップス・バーベキュー味”と書かれたスナック菓子の袋を手に取る。続いて、冷蔵庫からオレンジ風味の炭酸飲料を出していた。
「じゃあ、頑張ってね!」
どこか他人事のように言って、もちづき君は台所から去って行く。なんというか、自由な神様だ。
「花乃、そろそろ生地がいいのではないですか?」
「あ、そうですね」
休ませていた生地を一口大にカットし、麺棒で広げた。
つごもりさんが生地をカットし、良夜さんが麺棒で伸ばしてくれる。私はその生地にあんこを包み、蒸し器の中に並べていった。
まんじゅうの上に桜の塩漬けを並べ、十五分ほど蒸したら――“桜まんじゅう”の完成だ。
「味見をしてみましょうか」
ちょっぴり形がいびつなものを選び、三等分にして分ける。
ふーふーと冷めしてから、パクリと食べた。
「あっ、熱っ!」
しっかり冷ましたつもりだったが、中のあんこはアツアツだった。
生地はふかふかで、ほのかに桜の風味が香り、品のある甘さのあんこがまんじゅうの味わいを引き立ててくれる。
「幸代の、味だ」
「本当ですね。私も以前、幸代の冷凍あんこでまんじゅうを作ったのですが、このように生地の絶妙なふわふわ加減は再現できなくて」
「――漫画を読んで、テレビを見て、一日中ぐうたらしているだけだけど、何か?」
もちづき君がひょっこりと、台所に顔を覗かせた。
「なんだ、まだまんじゅう、できていないんだ」
「あと少しですね」
「ふーん」
それはそうと、神様は働かないらしい。それが、お決まりなのだとか。
「あの、漫画というのは?」
「あんたの父親のコレクションだよ。古いものばかりだけれど、なかなか面白いね。それから、幸代のコレクションもなかなか興味深いよ」
「お祖母ちゃんのコレクション、ですか?」
「うん。韓流ドラマ。どろどろした人間の感情が、よく表現できている」
そういえば、誕生日プレゼントに何回か韓流ドラマのボックスを買ってあげたような。まさか、神様が漫画やドラマを見ているなんて。
「良夜、おやつは?」
「こちらに」
良夜さんが開いた棚には、スナック菓子の袋が大量に詰められていた。カップ麺も山のように積まれている。
「こ、これは……!?」
「幸代が教えてくれたんだ。体に悪いから、一週間に一度だけ食べていいってさ」
私が子どものときは、スナック菓子なんて一度も出さなかった。いったい、どういう心境の変化だろうか。
「幸代も、昔のように体が動かなかったんでしょう?」
「ああ、なるほど……っていうか、自然に私の考えていることと会話しましたね?」
「わざわざ聞き返すのも、まどろっこしいだろうが」
そう言って、もちづき君は“ジャガイモチップス・バーベキュー味”と書かれたスナック菓子の袋を手に取る。続いて、冷蔵庫からオレンジ風味の炭酸飲料を出していた。
「じゃあ、頑張ってね!」
どこか他人事のように言って、もちづき君は台所から去って行く。なんというか、自由な神様だ。
「花乃、そろそろ生地がいいのではないですか?」
「あ、そうですね」
休ませていた生地を一口大にカットし、麺棒で広げた。
つごもりさんが生地をカットし、良夜さんが麺棒で伸ばしてくれる。私はその生地にあんこを包み、蒸し器の中に並べていった。
まんじゅうの上に桜の塩漬けを並べ、十五分ほど蒸したら――“桜まんじゅう”の完成だ。
「味見をしてみましょうか」
ちょっぴり形がいびつなものを選び、三等分にして分ける。
ふーふーと冷めしてから、パクリと食べた。
「あっ、熱っ!」
しっかり冷ましたつもりだったが、中のあんこはアツアツだった。
生地はふかふかで、ほのかに桜の風味が香り、品のある甘さのあんこがまんじゅうの味わいを引き立ててくれる。
「幸代の、味だ」
「本当ですね。私も以前、幸代の冷凍あんこでまんじゅうを作ったのですが、このように生地の絶妙なふわふわ加減は再現できなくて」