ひとまず、祖母の遺品整理をする。良夜さんが手伝ってくれるようだ。

「お手数おかけします」

「別に、あなたのためではありません。幸代の部屋を、荒らされたくないだけです」

「そうでしたか」

 ツンツンとした態度を取っている良夜さんだが、先ほどクマのパジャマ姿を見てしまったからか、そこまで怖く思わなくなった。クマのパジャマに感謝だ。

 しかし、あのクマの絵柄は妙に覚えがある。そういえば二年前、祖母と買い物に出かけたとき、裁縫店で似たような柄の布を買っていたような。

「あの、良夜さん。もしかして、クマのパジャマは祖母の手作りですか?」

「そうですよ」

 やはり、そうだったのだ。

 なんでも、もちづき君はウサギ柄、つごもりさんはワニ柄のパジャマを作ったらしい。さすが、手先の器用な祖母だ。チョイスする布の柄もセンスがいい。

「もしかして、昨日もちづき君が着ていたウサギ耳のパーカーも、お祖母ちゃんの手作りなんでしょうか?」

「そうですが――口ばかり動かしていないで、手も動かしてください」

「す、すみません」

 遺品整理を開始する。

 断捨離が趣味だった祖母の押し入れには、ほとんど物がなかった。
 寄り木細工の美しい木箱の中には、数冊のアルバムと私が贈った手紙や贈り物が詰められていた。

「これは――!」

「幸代の息子ですね」

「え、ええ」

 アルバムの一冊は、父の幼少期の姿が写真に収められていた。本当に、つごもり君そっくりだった。