なんと、驚いたことに、手の平に満月の形が浮かんだ。これは、満月大神の巫女の証らしい。

 同時に、体がじわじわと温かくなる。これが、満月大神から授けられし、神通力なのか。
 目に見えないものが見えたり、聞こえないものが聞こえたりと、不思議な現象は起きないけれど。

「神通力は巫女によって異なる。花乃は花乃だけの、能力があるはずだ」

「私だけの……!」

 いったい、どんな能力があるのか。なんだか、楽しみだ。

 何はともあれ、私がやりたいことの方針が固まった。

 窓の外を見てみたら、庭にある桜の花に目が留まる。強い風が吹き、枝が揺れた。

 花びらが、舞う。
 私の涙雨は、桜の花びらとなった。

 もう、大丈夫だろう。私は、ひとりではないから。

 新しい人生の門出を、晴れやかな気持ちで迎えることとなった。