コーケコッコー! という元気な鶏の鳴き声で目を覚ます。

 いつもの、見慣れた祖母の家の天井が見えた。

 小学生のころ、壁にあるシミが怖くて、何度も祖母の布団にもぐりこんだのを思い出す。今見れば、なんてことのないただのシミだ。こんなものを怖がっていたなんて……。

 窓から柔らかな日差しが差し込んでいる。カーテンも閉めずに、眠ってしまったようだ。

 明るさから、まだ日が昇ってさほど時間が経っていないだろう。
 昨晩はコンビニのおにぎりとお茶で夕食を済ませたからか、お腹がぐーっと鳴った。

 すぐに起き上がる元気はない。何度か寝返りを打ってから、仕方がないとばかりに起き上がる。

 田舎の春は、肌寒い。そのため、長袖のブラウスにカーディガンをはおり、細身のスキニーパンツを合わせた。髪はまとめて、頭上でお団子に結っておく。

 障子を開いて廊下に出た。人の気配はいっさいない。
 昨晩見聞きしたのは、たぶん疲れて見た夢だったのだろう。

 だって、神様がお祖父ちゃんの若いときの姿で現れて、銀髪と黒髪の美青年が小型犬と大型犬になるなんて嘘みたい。

 お祖母ちゃんが作った和風カフェを神社代わりにしていて、人々の願いを叶えるなんて漫画みたいな話だ。

 おまけに、私が巫女に選ばれるなんて。

 洗面所で顔を洗う。この辺りの水は、驚くほど冷たい。はっきり目が覚めた。歯を磨いたら、気分もスッキリとなる。

 まず行うのは、朝食作りだ。祖母も「朝ごはんは一日の中でもっとも重要なものだよ。元気の源になるんだ」と話していた。しっかり食べて、働かなくては。

 長い間放置していた冷蔵庫の中身は、期待できないだろう。お米はたぶんある。それと、畑から菜っ葉を拝借して、味噌汁を作りたい。