考え抜いた結果、私はパティシエールとなった。祖母がしていた手仕事と同じように、毎日お菓子を作って、たくさんの人達に喜んでもらえるから。

 運よく、都内でも有名なパティスリーに就職したものの、祖母の暮らしとはほど遠い。忙しいだけの、めまぐるしい日々を過ごしている。
 毎日残業が続き、休日出勤もこなしていた。休日は家で大人しく眠るだけだった。

 祖母とは、一年に一回会えたらいいほう。
 たった二時間だけの距離なのに、大人になった私には遠い場所のように思えてならなかった。

 いつか、祖母の住む町に小さなカフェを開けたらいいな……。私がお菓子を焼いて、祖母がお茶や紅茶を淹れてくれる。
 そんな夢を語ったとき、祖母は嬉しそうに微笑んでいた。

 祖母は「だったら、この家を改装して、“かふぇ”にしたらいいよ」なんて楽しそうに話していたのに――

祖母は突然亡くなってしまった。

 ◇◇◇