家の中は、すっかり変わっていた。

古びた下駄箱は撤去され、玄関から部屋まで五十センチはあった上がり(かまち)――段差はなくなっている。床板は寄せ木細工のような模様があり、温かい雰囲気を感じた。

 ウォールナットのオシャレなカフェテーブルが並び、奥のほうには格子戸に囲まれた畳のスペースもある。
 天井から吊り下げられている照明は、月を模したものだろうか。

 数ヶ月前まで普通の民家だったのに、すっかり和風カフェと化していた。

「あの、ここは――」

「幸代が作ったんだ。孫である、あんたのためにね」

「私の……?」

「“さぷらいず”とかなんとか、言っていたな」

「サプライズって、お婆ちゃん……!」

 驚きすぎて、その場にしゃがみ込んでしまう。
 どうやら、サプライズをしてしまうのは血筋のようだ。

「座るんだったら、席にしてくれませんか?」

 背後から聞こえた声に、ハッとなる。振り返った先にいたのは、先ほど台所で見かけた和装姿に前掛けをかけた、銀髪に赤い瞳を持つ青年だった。手には、お茶が乗った盆を持っている。

「奥の座敷で、事情を話そう」

 美少年の提案に、頷く他なかった。
 
 目の前に、八歳くらいの金髪碧眼の美少年と、二十歳前後の銀髪赤目の青年と、二十歳半ばの黒髪青目の男性が並んで座る。

 皆、日本人離れした美貌を持っていた。かといって、どこの国の人だと聞かれたら、首を傾げる他ないが。

「僕は、もちづき、こっちの黒髪でチワワみたいにびびりなのが、つごもり。その隣の、銀髪でおかんみたいなのが、良い夜と書いて良夜」

「チワワとおかん……!」

 わりと酷い紹介であったが、ふたりの青年は抗議せずに大人しくしていた。

「私は、この家に済んでいた山田幸代の孫である、山田花乃、です」

「花乃、ね」

 もちづき君が、目を細める。やはり、彼に子どもっぽさは感じない。

 目の前に、お茶と漬物が差し出される。「どうぞ」と進められたので、お言葉に甘えて飲ませていただく。実を言えば、先ほどから喉がカラカラだったのだ。

 アツアツで、爽やかな渋みを感じる、おいしいお茶だった。

 ちらりと、漬物に視線を移す。これは、ぬか漬けだろうか。気になって口に含んでみた。パリパリと歯ごたえがあり、塩気がよく利いている。正真正銘、祖母のぬか漬けだった。

「こ、このぬか漬け、どうして!?」