狛犬カフェで悩み事、祓います

 鷹司さんは夢の姿そのままに、濃いキャラクターを披露していた。

「山田花乃、元気そうではないか」

「あの……はい、元気、です」

「何を戸惑っている?」

「いえ、その、夢、ですよね?」

「何がだ?」

「狛犬カフェを、開いていた、とういうのは?」

「夢なわけがあるか! すべて現実だ!」

 そんなわけない。私は三月下旬に交通事故に遭い、意識不明の状態で入院していたのだ。その間に、生き霊となって祖母の家でカフェを開いていたなんて、ありえないだろう。

「夜中に登山して神社にお参りしたのを、勝手に夢の話にされては困る」

 そうだ。私は、鷹司さんと、満月大神が奉られた神社を目指して、登山した。
 ということは、私が夢見ていたと思っていた毎日は現実で――。

「夢では、なかったのですね」

 熱いものがこみ上げてくる。それは、涙となって私の眦から溢れてきた。

「よく、頑張った」

「はい」

「だが、これからは、もっともっと、頑張ってもらわなければならない」

「え?」

「皆、狛犬カフェの開店を、待っている。早く元気になって、戻ってこい」

 私を、待ってくれる人がいる。受け入れてくれる場所がある。
 それは、とても嬉しいことだ。

「ありがとう、ございます」

「礼は私ではない、町の者達に言ってくれ」

「はい!」

 真っ暗で曖昧だった私の未来に、一筋光が差し込んだ。

 もう、迷わないだろう。

 私は、私だけができることを、知っているから。

 ◇◇◇