狛犬カフェで悩み事、祓います

「自分でも、今、驚いています。ど、どうしよう……う、嬉しい」

 生きていることがこんなにも嬉しかった日が、あるだろうか?

 いいや、ない。

 満月大神は手を伸ばし、私の頭を撫でてくれた。

『早く、本当の自分の体に戻って、元気になるんだ。それからここを再訪して、この町の人達のために、お菓子を作って』

「は、はい!」

 返事と共に、意識が遠退いていく。慌てて鷹司さんを振り返ったら、手を振っていた。

 満月大神は、微笑んでくれているように見える。

 つごもりさんと良夜さんは、尻尾を振って見送ってくれているようだった。
 糸が切れたように、プツンと意識がなくなった。

 瞼を開いて最初に見えたのは、見知らぬ天井だった。

 ◇◇◇