狛犬カフェで悩み事、祓います

 ずっと当たり前のように傍にいてくれたが、そもそも彼らは人ではない。突然いなくなっても、なんら不思議でないのだ。

『おい、今からそっちへ行くから、大人しくしておけ』

「あ、生米は、大丈夫です」

『見舞いではない! なんか、嫌な予感がする』

「いえ、そんな……」

『行くからな。動くなよ?』

 鷹司さんはそう言って、通話をブツンと切った。いったい、何をしにくるというのか。それに、嫌な予感とは?

 電話が切れた途端、不安になった。

 立ち上がる元気すらなく、その場に座り込んだまま時間が流れていく。

 十五分後、鷹司さんは本当にやってきた。施錠した玄関を、ドンドン叩く。

「山田花乃、来たぞ!」

 本当に、賑やかな人だ。安堵の息をひとつ零し、玄関へ向かう。

「こんばんは」

「こんばんはってうわっ!!」

 なぜ、挨拶しただけなのに、そこまで驚くのか。気配はないのに、声がしたから?

「扉を開けて挨拶したのに、まだ、存在感が薄いのでしょうか?」

「薄いのは存在感ではない。山田花乃、君の姿だ!」

「はい?」

 私自体が薄いとは、どういう意味なのか。
 首を傾げていたら、鷹司さんはスマホのカメラを自撮りモードにして私に見せた。

「どうだ? 薄いだろう?」

「え!?」

 薄い以前に、私の姿が映っていない。どういうことなのだろうか。スマホのディスプレイには、私の背後にある廊下だけが映っていた。

「あ、あの、鷹司さん。わ、私、映っていない、です」

「は!?」

「カメラに、姿が、ないんです」

 鷹司さんは「嘘だろう!?」と言い、私のほうへと回り込む。

 自撮りモードのスマホには、鷹司さんしか映っていなかった。

「どういう、ことなんだ?」

「わ、私も、聞きたいです」

 ガクブルと、足が震えてしまう。足下を見て、驚いてしまった。

「わ、私の足が、ない!?」

「ないな!!」

 鷹司さんにも、私の足がないように見えるようだ。

 いったい、私はどうしてしまったのか。

 カメラに写らない、足がないということは……?

「私、も、もしかして、し――」