そうだ。諦めては、いけない。
まだ、町の行く末を見届けていないし、カフェで私のお菓子を楽しみにしてくれるお客さんもいる。まだまだ、頑張らないといけないのだ。
必死になって浮上しようと手足をばたつかせるも、なかなか上がれない。体が、重石のように重たいのだ。どうして私はこうなのか。
どんくさくて、体力がなくて、言いたいことも言えない。
こういうとき、どうすればいいのか。鷹司さんが、以前教えてくれた。他人に、助けを乞えばいいのだと。
そんな単純な解決策でさえ、私は知らなかったのだ。
息を大きく吸い込んで、叫んだ。
「誰か、助けて!!」
それを口にした瞬間、体がすっと軽くなる。そして、誰かの手が私の腕を掴み、ぐっと地上まで引き上げてくれた。
「――ハッ!?」
真っ暗な中、パッと目を覚ます。全身汗びっしょりで、筋肉痛のような倦怠感があった。
内容は思い出せないが、不思議な夢を見ていたような気がする。
辺りはすっかり暗い。昼間から夜まで、ぐっすり眠っていたようだ。
耳元でけたたましく鳴っていたのは、スマホのアラームではなく、着信音だった。
ディスプレイには、地主様と表示されている。鷹司さんだ。
重たい体を起こし、通話ボタンを押した。
「あの、もしもし」
『山田花乃、生きているか?』
「い、一応」
『……』
珍しく、鷹司さんは押し黙る。心配をかけていたのだろうか。
『食事は、取ったか?』
「いいえ、まだ、です」
『ひとり暮らしだったな?』
一応、そういうことになっている。田舎町では、未婚の男女が暮らすなど、あってはならない。だから、もちづき君は親戚の子どもで、つごもりさんと良夜さんは通いの従業員、ということになっていた。
『生米でも、持って行こうか?』
「なんで、生米を?」
『私は料理など作れない。だから、生米を持って行くと言っている』
お見舞いに生米を持って行くなんて、斬新すぎるだろう。笑ってしまう。
『少し、元気になったようだな』
「おかげさまで」
『従業員は、もう、帰ったのか?』
「あ、いえ」
時刻は二十時過ぎ。夕食を食べ終えたくらいだろうか。
スマホを片手に、部屋を出る。台所を覗きに行こうとしたら、違和感を覚えた。
「あれ?」
『どうした?』
灯りが点いていない。どこに行ってしまったのだろうか。
まだ、町の行く末を見届けていないし、カフェで私のお菓子を楽しみにしてくれるお客さんもいる。まだまだ、頑張らないといけないのだ。
必死になって浮上しようと手足をばたつかせるも、なかなか上がれない。体が、重石のように重たいのだ。どうして私はこうなのか。
どんくさくて、体力がなくて、言いたいことも言えない。
こういうとき、どうすればいいのか。鷹司さんが、以前教えてくれた。他人に、助けを乞えばいいのだと。
そんな単純な解決策でさえ、私は知らなかったのだ。
息を大きく吸い込んで、叫んだ。
「誰か、助けて!!」
それを口にした瞬間、体がすっと軽くなる。そして、誰かの手が私の腕を掴み、ぐっと地上まで引き上げてくれた。
「――ハッ!?」
真っ暗な中、パッと目を覚ます。全身汗びっしょりで、筋肉痛のような倦怠感があった。
内容は思い出せないが、不思議な夢を見ていたような気がする。
辺りはすっかり暗い。昼間から夜まで、ぐっすり眠っていたようだ。
耳元でけたたましく鳴っていたのは、スマホのアラームではなく、着信音だった。
ディスプレイには、地主様と表示されている。鷹司さんだ。
重たい体を起こし、通話ボタンを押した。
「あの、もしもし」
『山田花乃、生きているか?』
「い、一応」
『……』
珍しく、鷹司さんは押し黙る。心配をかけていたのだろうか。
『食事は、取ったか?』
「いいえ、まだ、です」
『ひとり暮らしだったな?』
一応、そういうことになっている。田舎町では、未婚の男女が暮らすなど、あってはならない。だから、もちづき君は親戚の子どもで、つごもりさんと良夜さんは通いの従業員、ということになっていた。
『生米でも、持って行こうか?』
「なんで、生米を?」
『私は料理など作れない。だから、生米を持って行くと言っている』
お見舞いに生米を持って行くなんて、斬新すぎるだろう。笑ってしまう。
『少し、元気になったようだな』
「おかげさまで」
『従業員は、もう、帰ったのか?』
「あ、いえ」
時刻は二十時過ぎ。夕食を食べ終えたくらいだろうか。
スマホを片手に、部屋を出る。台所を覗きに行こうとしたら、違和感を覚えた。
「あれ?」
『どうした?』
灯りが点いていない。どこに行ってしまったのだろうか。

