メロンは表面に傷があるもので、ひと玉五百円だった。味はお店に並ぶ物と変わらないので、かなりお得である。
「そうなんだ。果樹園かー。ちょっといいかも」
料理を通して、町の良さを伝えることに成功したようだ。
「いいところなんだよね。でも、私には田舎過ぎるな」
「一応、地主さんが人を増やそうと考えているみたいなのですが」
「うーん」
鷹司さんは日々頑張っているものの、徳岡さんの心をすぐに動かすような事業は始まっていない。
空気がだんだん暗くなっているところに、扉がバーン!と開かれる。このように開け閉めするのは、鷹司さんしかいなかった。
「喜べ! この寂れた町に、パン屋ができる!」
大きな声に、徳岡さんがびっくりする。他にお客さんがいないと確認してから、叫んでいただきたい。本当に、自由な人なのだ。
「あの、すみません。こちらの方が、地主の鷹司さんなんです」
変な人だと思われないように、紹介しておく。
「彼女は?」
「アクセサリー作家さんです」
「おお! もしや、この町にアクセサリーショップを開きたいとか?」
「いえいえ、違います!」
鷹司さんの飛躍した考えを否定したが、徳岡さんは小さな声で「いいかも」なんて呟いていた。
それを、鷹司さんは聞き逃さない。
鷹司さんは徳岡さんの前にどっかり腰掛け、書類を取り出した。そこには、自営業支援計画なるものが書かれている。
「この町で新規自営業をする者達へ向けた計画だ。一年間、家賃無料で、リノベーションした古民家を店舗として貸し出すサービスを考えている」
徳岡さんの表情が変わる。もちろん、いい方向へだ。
「この田舎だったら、出店料も安いだろうし。イベントまで、三時間かけて買いにくるお客さんもいるから、通ってくれるかも?」
「そうなのですね」
やってくる人が増えるようだったら、店舗となる古民家を周回するバスの運行も検討するという。
「月に一度、マルシェを開くのもいいだろう」
マルシェというのは、フランス語で“市場”を示す言葉だ。アクセサリーからお菓子までいろんなお店を出店するイベントである。
今は各地で毎週のようにマルシェが開催されている。私も、近場であるときはついつい足を運んでしまうのだ。
「マルシェを開催する場所も、検討している。今年で農業を辞める者が契約解除の申し出をしたので、そこを広場にする予定だ」
「そうなんだ。果樹園かー。ちょっといいかも」
料理を通して、町の良さを伝えることに成功したようだ。
「いいところなんだよね。でも、私には田舎過ぎるな」
「一応、地主さんが人を増やそうと考えているみたいなのですが」
「うーん」
鷹司さんは日々頑張っているものの、徳岡さんの心をすぐに動かすような事業は始まっていない。
空気がだんだん暗くなっているところに、扉がバーン!と開かれる。このように開け閉めするのは、鷹司さんしかいなかった。
「喜べ! この寂れた町に、パン屋ができる!」
大きな声に、徳岡さんがびっくりする。他にお客さんがいないと確認してから、叫んでいただきたい。本当に、自由な人なのだ。
「あの、すみません。こちらの方が、地主の鷹司さんなんです」
変な人だと思われないように、紹介しておく。
「彼女は?」
「アクセサリー作家さんです」
「おお! もしや、この町にアクセサリーショップを開きたいとか?」
「いえいえ、違います!」
鷹司さんの飛躍した考えを否定したが、徳岡さんは小さな声で「いいかも」なんて呟いていた。
それを、鷹司さんは聞き逃さない。
鷹司さんは徳岡さんの前にどっかり腰掛け、書類を取り出した。そこには、自営業支援計画なるものが書かれている。
「この町で新規自営業をする者達へ向けた計画だ。一年間、家賃無料で、リノベーションした古民家を店舗として貸し出すサービスを考えている」
徳岡さんの表情が変わる。もちろん、いい方向へだ。
「この田舎だったら、出店料も安いだろうし。イベントまで、三時間かけて買いにくるお客さんもいるから、通ってくれるかも?」
「そうなのですね」
やってくる人が増えるようだったら、店舗となる古民家を周回するバスの運行も検討するという。
「月に一度、マルシェを開くのもいいだろう」
マルシェというのは、フランス語で“市場”を示す言葉だ。アクセサリーからお菓子までいろんなお店を出店するイベントである。
今は各地で毎週のようにマルシェが開催されている。私も、近場であるときはついつい足を運んでしまうのだ。
「マルシェを開催する場所も、検討している。今年で農業を辞める者が契約解除の申し出をしたので、そこを広場にする予定だ」

