本日も、昨日と同じくかき氷を出す。今日は、メロンソースとパイナップルソースを用意してみた。

 本当は別のメニューをと考えていたけれど、家族の間で話題になってもお店にいったらなかった、なんてことがあったら悲しい。だから、しばらくかき氷のメニューを続けてみようと、皆で話し合った。

 開店準備を進めていたら、外から女性の悲鳴が聞こえた。

「きゃあっ!!」

 ガタガタと、何かが倒れたような音も聞こえる。慌てて外に出たら、女性が倒れていた。傍には、中身がちらばった旅行鞄もある。

「だ、大丈夫ですか!?」

 良夜さんが駆け寄り、女性の体を抱き起こす。つごもりさんは旅行鞄をきれいに整えていた。
 女性は三十代半ばくらいだろうか。色白で、きれいな人だ。

 見た感じ怪我はしていないようだ。夏なのに長袖長ズボンだったのが、よかったのだろう。

「立てますか?」

「うわっ!!」

 手を差し出しただけなのに、またしても驚かれてしまった。安定安心の、存在感のなさである。

「ごめんなさい。気配がなかったものだから」

「大丈夫です。よく、いない存在として扱われているので」

「そ、そうなの」

 女性は私の手をしっかり握り、「よいっしょ!」というかけ声と共に立ち上がった。

「もしかして、ここのお店の人?」

「はい」

「営業中……よね?」

 旅行鞄を差し出したつごもりさんが、コクリと頷いた。

「よかった! じゃあ、お邪魔させてもらうから」

 お店に入った途端、「はー、生き返る」と幸せそうに呟いていた。

「本日のメニューは、メロンのかき氷と、パイナップルのかき氷のみでして」

「わー、迷うな」

「メロンとパイナップル、半分ずつにもできますよ」

「いいの? じゃあ、それでお願い」

「かしこまりました」

 良夜さんがお冷やを出したら、一気飲みする。

「お水、おいしい!」

「山の湧き水なんです」

「そうだったの。さすが、自然豊かな町! それにしても、驚いた。コンビニのひとつもないどころか、木陰すらないから」

「そうですね」