無駄に重たい屋上の扉が、大袈裟にバタンと大きな音を立てる。
結局、後悔に後悔を重ねることになってしまったけど、どうせ人は後悔をせずにいられない生き物だ。
1つだけでいいと願っていたのに、1つ与えられると、やっぱりもう1つ欲しくなってしまう。
だから、これくらいで未練は投げ捨てて、逝こう。
決意と共に目を閉じた。
きっともう、目を開けることはない。
そう思ったのに、1時間経っても私は走馬灯から覚めることはなかった。
「これ、どうなってんの……?」
思わず目を開け、辺りを見渡す。
すでに空には月が昇り、校庭では部活の片付けが始まっている。
走馬灯はいまだ覚める気配はなく、嫌な予感に指先が冷たくなるような感覚に襲われた。
(まさか、タイムリープとか……?)
漫画やドラマで見たような単語が思い浮かぶ。
にわかには信じがたい。
だって私はさっきまでベッドの上で、家族に囲まれて、息を引き取る寸前だった。
目を閉じたら屋上にいて、灯山と話した過去の記憶に飛んでいた。
そう、ここは記憶の中のはずだ。
「なのに、なんで目が覚めないの?」
声が、震える。言葉にはしがたい恐怖心のようなものがあった。
だって、もし本当に私の魂がタイムリープをしたとして、この時代を生きる私はどこに行ったというのか。
思わず頬を抓る。痛い。
立ち尽くしていると、ポケットが震えた。