「藤城……オレの隣にいるのは……やはり彼女か?」
先輩は自分では見えないであろう、足下にしゃがみこむ少女の霊を見た。
「はい……そうだと思います……」
「そうか……わざわざ調べるのに付き合ってもらって、すまなかったな」
「いっ、いえこちらこそ、あまりお役にたてずすみませんでした……」
「いや、藤城はよくやってくれている。感謝しているぞ? 今日はもう遅い、駅まで送ろう」
「えっ? いえ、そんな大丈夫ですよ? 道わかりますし、一人でも帰れますよ」
「何を言ってるんだ貴様は、一応女なのだからこういう時は素直に送られるものだぞ?」
「そうなんですか?」
「そうだ、少し待ってろ」
そういうと先輩は、門の外で私に待っているように指示を出し、自宅の裏手の方へ自転車をとりに行く為向かった。
足のケガは本当に大丈夫なのかと聞いたら、今ならヘディングシュートが決められる! といきまいていたが、それは頭でするものなので足は関係ない。
私がボーっと門の前で先輩を待っていると、
「あら、もうおかえり? 夕飯食べていけばいいのに~」
と、佐野さんに声をかけられた。
「いっ、いえいえそんな! もう遅いですし……」
「そうか~、まあ、夜遅くにこんな可愛い娘さんを歩かせるのもなんだかね~、んじゃあ、今度泊まりにおいで~輪ぼっちゃんの部屋に布団しくから」
「えっ!? はっ!? いえっ!! あのそれはちょっと!!」
「ぼっちゃん昔っから恐がりだから~、まだちっちゃい時なんて夜んなると毎晩泣いてね~……だからきっと、誰か隣にいてくれたら喜ぶよ~」
「そ、そんな……っていうか、持明院先輩ってそんなに恐がりだったんですか?」
現在、普段ずっと幽霊にあんなにも情熱を傾け、会いたくて会いた過ぎて、もはや幽霊が憧れの対象と化している先輩が?
私にはやはり不思議でしかない。
「ああ~、そりゃあもう、オバケが出るから~って電気はつけっぱなしでいつも寝てたしね」
本当に……そんな風になるくらいなら心霊研究部とか止めればいいのに。
「昔は、オバケが怖い怖い言って~、朝から晩まで泣いてたのにな~」
「そうだったんですね……」
小さい頃みたいに、今も朝から晩まで泣いていればこんな事にはならなかっただろうに……。
「いっつもね~、な~んか白い女の子が見える~って言ってね~、だ~れもいないのにね~」
「白い……女の子?」
佐野さんの言葉に、私の脳裏をアノ少女がすぐによぎった。
「そうだよ~、小学校あがるまでは、いっつもいろんなオバケが見えるって怖がってね~、でも、そうすると白い女の子が必ず出て来てオバケがいなくなったんだと~」
もしかして……。
持明院先輩は、以前幽霊が本当に見えていた……?
だとしたら、あの白い少女は……?
もしかして……幼い頃に持明院先輩が見ていたものと同じ──?