彩り鮮やかな赤と白のコントラスト、ホイップクリームと甘ずっぱいイチゴが織りなすハーモニー。
そう、佐野さんの持って来たケーキだ。
ウチのおやつはほぼ、和菓子。
檀家さんや近所の人からもらったアンコや干し柿や、おせんべいがテーブルの上と仏壇の上には必ず鎮座している。
そんな私に洋菓子はまさに憧れの存在だ!
学校のランチバイキングにもケーキはあるが、周囲の目を気にしてあまりガッツケないでいる。それもまた私の洋菓子への思いを募らせていた。
しかも、このショートケーキ、恐らく私の憧れの学園近くにある[パティシエ・ルメル]のショートケーキとお見受けする。
いつもお店のショーウィンドウに張り付いて見ていたから確かだ。
「……わかった、それを食べてから蔵へ行くぞ」
持明院先輩は深くため息を吐いた。
どうやら私のケーキへの眼差しは、常軌を逸していたようだ。
先輩が折れるとは相当だろう。
「はっ、はい! ありがとうございます! ごちそうさまです、あっ! まだ食べていなかった、いただきます!!」
私は無我夢中でケーキを味わった。
ケーキがモノ珍しいのか横から少女の霊がじっと覗き込んできていたが、私はお構いなしと口にケーキを運んでいった。
「子供か……オマエは」
ふいに先輩は、ケーキに夢中だった私の頬を指で撫でた。
「えっ……!?」
「クリーム、ついてたぞ」
そう言って私の頬を撫でた指先を目の前に見せる。
「あっ、す、すいません!」
「別に……いいけど」
そしてそのまま、指先のクリームを舐めてしまった。
えっ? あっ、アレ?
なんかコレ……
すごくドキドキするシチュエーションなんじゃ!?
私は慌てて残りのケーキを口に放り込み喉に詰まらせ、急いで紅茶を飲み更にむせ、先輩に呆れ顔を向けられていた。
「ちょっと待ってろ」
先輩は立ち上がり、部屋を出ると水の入ったコップを持って再び現れた。
「す、スミマセン……、ご迷惑をおかけしました」
「大丈夫か?」
「はっ、はい……」
んっ? やっぱり……。
なんか二人だけだと少しだけ先輩の雰囲気が柔らかいというか、優しい気がする。
気のせいかな?
そういえば……以前、ももちゃんも二人きりになって持明院先輩にときめいていたな……
でも、その後また、先輩のおかしな言動やオカルトに絡んだ時の常軌を逸した行動にドン引きしてすぐに落ち着いたっけ……
「じゃ、そろそろ行くぞ?」
ようやく落ち着いた私を見て先輩は言った。
「あっ、は、はい……」